
光陰矢の如しの3年点検。
「暮らしのことば」にも掲載がある長野市Y邸。
うそ? 去年点検やったはずでしょ?
と思ってしまうほど50歳を過ぎますと、時間という矢が追えなくなってしまうようです。
2年前の1年点検は、まだ新築といっていいわけですが、3年ともなると概ねその家の本当の姿が晒されるものです。
お付き合いして3か月はお相手女性の本性が分からないのと同じ。
次第に相手のクセや好み、行動パターンが見えてくる。
夫婦の定義は「相手の行動パターンがわかること」なのかもしれません。
住宅の3年点検はどういうところを見てゆくのか?
2時間という限られた時間で、すべての部位はなかなか点検できないので、ポイントを絞ってみてゆくのが肝要です。
私の場合は伸縮棒にカメラをつけて、まずは屋根を点検することが多いです。
屋根はふだん住人の方もよくみることがないので、台風で屋根や端の板金が剝れていたりということもまれにあります。自分の頭のつむじは見たことがありません。
特に北信州のような豪雪地では雪はちょくちょくいたずらするものです。
近年太陽光パネルも屋根に多く載っているわけですが、なかなか点検プログラムみたいのなのは聞いたことがありません。雹(ひょう)や飛散物で割れていないとも限らない。
アマトイが詰まっていないか、破損していないかも3年点検の重要チェックポイント。
Rebornの標準屋根材はディプロマットなので、屋根から雪が滑り落ちることがほとんど起こらないので、
雨樋の破損は過去にほとんどありません。
近くに高い木立がある場合はけっこう雨樋も詰まりやすいので、3年点検時に傾向がはっきりします。
Y邸には給湯のための太陽集熱も備わっています。
真空管のガラスビーカーが24本。これも時として割れるそうですから要チェックです。
最近はみませんが、昔は野球少年がどこでも野球をしていました。
こういうガラス管はボールが当たったらすぐに割れちゃいそう。
しっくい左官外壁も見て回ります。
割れや剥離がないか。
朝9:00、東面の窓に影を落とすひさしの効果ににやり。
カルクファサード・グレージュ色の外壁はかなりいい状態のようです。
窓が外壁より引っ込んでついているため、下台にアルミの水切りを設置しています。
ここには雨が落ちますから、両端のしっくいが冬に凍害をうけて剥離することがあるんですが、このドイツ製の水切りを使うようになってからは剥離が起きなくなりました。
ただ、これはある意味なかなか防ぎようがないんですが、出隅(ですみ)部は壁面の膨張収縮で割れる傾向があります。法則性がまだわかりませんが、四角い建物の4隅のうち、2か所で発生することが多いと感じています。
しっくい左官壁とはいえ、冬は-10℃、夏は60℃(表面温度)にもなる温度変化があるわけで、間口10mでおそらく5㎜以上は膨張収縮しているはずです。各面で伸縮目地やクラック誘発目地を設けていないので、おそらく角にしわ寄せがきているのではないかと考えられます。
デッキテラスの下も要注意ポイントです。
この空間には園芸用品や日曜大工でつかう板や道具が、あるいは風でどこからとこなくやってきた葉っぱやごみが吹きだまることがあり、シロアリ被害に遭いやすい。加えて発見が遅れます。
やつらは光や風が苦手なので、できるだけ風通しよく、このお宅のように何も置かないのが理想です。
下水管のつまり具合も蓋をあけてみておきます。
特に台所の排水は詰まりやすいので念入りに。
壁の通気層入口の防虫網や、床下への空気の流入口も重要チェックポイント。
蜘蛛の巣がガチガチあったり、電気配線なんかがその入り口を妨げていることがあります。
室内に入って、各水廻り機器の配管部も念入りに。
住人の方はほぼ気にしてみることはないはずなので、早期発見できるとしたら僕らしかいない!
そう意識して懐中電灯を照らしながら水漏れがないか、カビはないか。
24時間換気扇のファンについたホコリの状況もチェック。
換気扇の清掃は引き渡し時にやり方を念入りに説明してはいますが、まれにド忘れしている方もいるのです。
給気口のフィルターの汚れ具合も1,2カ所をチェック。
いいえ、そうではなく、「施主が掃除をしてくれているか」
実はそのことをチェックしています。
1年点検は主としてヒューマンエラーの早期発見や建具調整などが多く、お施主さんもようやく生活が落ち着きつつある状況だと思いますので、あまりとやかくは言いません。
3年点検では、その家のクセといいますか、傾向がはっきり出てきますし、住人も住みこなしてきているので、暮らし方のポイントや温度設定、夏の日除けの方法、換気風量の調整など、具体的な運用の仕方を情報交換したりしてます。
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少年少女が幼稚園や学校でつくったものが飾られているのを実はきょろきょろ見ていたり、
「ねえ、これちょっと持ってってくれない?」なんて子供の手を活用させていただいたり(笑)。
住人十色の生活スタイルを垣間見てほくそ笑むのは、”スモールまっちょ工務店のおやじ”、という職業の特権かもしれません。