モア省エネと自然エネルギー利用は、未来からの挑戦状Session3

「信州の環境エネルギー戦略」条例化と取り残される既存住宅。

「このままではだめだ」そんな意識の高まりを受けて、より高いレベルでの省エネ性能を建物に求めてゆく、さらに自然エネルギーを積極的に導入するよう、建築主に対して「導入の検討」を義務化する、そんな動きがようやく始まりました。

新築する建物は義務化していく方向が決定的ですが既存の建物はその対象ではありません。
新築する予定のない皆さんこ安心ください。
いや?お待ちください。安心しないでください。
日本のほとんどの住宅は、 断熱材が入っていても全く効いていません。灯油やガス、電気をガンガンに使って暖房しますが、隙間だらけで、一向に暖かくなりません。断熱材も壁や床、天井に有ることはあるのですが、貴重なエネルギーを熱にかえた温風は外にどんどん逃げていきます。実際、断熱材がきちんと入っていない場所もたくさんあるでしょう。しかし今さら目で確認できません。確認のしようもありません。これではまさにザル状態です。高いエネルギーを買わされて、燃やして大気中にすぐに捨ててしまう。いくら暖房をしても家の中が寒い、温まらないということは、ある意味、罪な行為です。

昨年、長野県は全国に先駆けて、「平成26年度より、すべての住宅の新築または建て替え行為に対し、建築主に対し、予想されるエネルギー消費量の提示と省エネルギーの導入の検討を義務化」することが条例化されました。 住宅の建築に関わる技術者としては当然だと思いますし、日本の未来を見据えた場合、必要なことだと感じます。 一方で扱いの難しい既存住宅に対する法制化は見送られました。国も県も、ある意味あきらめているようです。既存住宅の場合、構造体の寿命を勘案しなくてはなりませんし、断熱改修を実施できる技術者もほとんど存在していません。残念なことです。

自然エネルギーの導入は現実的か?

より高いレベルでの省エネ性能は、高い断熱技術と、自然エネルギーの導入で実現できます。いまや難しいことではありません。たとえば太陽光発電を屋根上に載せたり、太陽熱集熱機を屋根などに置くなどしてお風呂の給湯に回す、ペレットストーブや薪ストーブを導入し、直接燃やして得られる熱を暖房として利用する。より高度な導入事例では地中熱回収や風力発電がありますが普及拡大には相当年数かかるでしょう。
基本的には太陽のエネルギーを利用する、という検討の方向性が妥当ですが、太陽光は立地の影響や設備機器が高いこと、また天候に左右されるため安定的でないという要素がぬぐえません。
私は、過去ぜいたく品としてしか扱われてこなかった薪(まき)ストーブという自然エネルギー利用装置に着目しています。ご存知のように薪はもともと樹木の幹です。

薪

植物は太陽エネルギーを受けて種が芽を出し、葉を広げ、幹を太くしてゆきます。
ある意味、太陽エネルギーを継続的に吸収して、固定・固形化したものといえるでしょう。この樹木が日本の山林にはたくさん残されています。
そして日々成長し続けています。
よく乾いた薪は、薪ストーブというエンジン装置によって熱エネルギーに変換され、室内の暖房ネルギーとして十分に利用できます。
太陽光発電は100万〜150万円ほど導入費用がかかりますが、薪ストーブは50万円台から導入できます。福島の原発事故以降、薪ストーブの国内設置台数が震災前の約3倍程度になったというのもうなづけます。
今後は乾燥した薪が安定的に調達できるかどうかが普及拡大のポイントになってくるだろうと思います。
長野県は県土の70%以上が森林です。間伐材も長野県森林税の導入などで里山から流通されるようになってきました。
税金という性格上、それを出資している県民に還元されるべきだと思うのですが、みなさんはいかがでしょうか。日照時間が比較的長く、森林に囲まれた長野県は耐用年数の限られるハイテク機械設備を軸とした手法ではなく、もっと身近にある森林というエネルギーの畑をもっと上手に利用すべきではないでしょうか。

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