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建物が命を奪うということ

2024.01.13|間取り・設計・デザイン
塩原真貴

能登半島地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

この厳冬期に避難を余儀なくされている方々へ-

後悔、恨み、嫉みなどマイナスの感情は抑えることができないとは存じますが、

本当に厳しい状況だと思いますがなんとか生き延びてほしい、

そう願うばかりです。

倒壊全壊をした建物を前に、

わが子の命を失った父親の

「なんでわたしらがこうなるのか・・・」

という声をニュースで見ました。

 

地震がすべて悪いのか?

運が悪かったのか?

わたしは建築士の立場ですので、

「いえ、あなたの子供の命を奪ったのは、あなたの家です。

もっというならば、その建物を設計した人が悪いのです」

と思わないわけにはいきません。

報道にもたびたび建築基準法のあり方について疑問視する声がありました。

”新耐震基準”というのは新しいものでもなんでもなくて、もう40年以上も前の基準で本当に必要最小限の耐震性を国が示したもの。(昭和56年誕生)

今回の地震でも新耐震基準の建物であっても全壊・半壊が多数だと聞いています。

基準が非常に低いものだと改めて感じましたし、現場では設計図通りに施工されていることも実は「まれ」だともかんじています。設計図通りにつくらずとも、現場の都合で筋交いを省いていたり、換気扇やエアコンの穴あけで筋交いがぶった切られていたり・・・。

ぜひこれを機にみんさんも自分の家の耐震性について、ぜひ今一度検証してみてほしいと思います。

ほとんどの市町村では昭和56年以前に建てられた木造住宅の耐震診断を無料で行っています。

耐震補強工事に対する補助金も、ある程度は期待できます。

また、昭和56年以降に建てられた木造住宅であっても新耐震基準ギリギリで建てられていることも少なくないですし、うちは平成だからと築年数のみで判断せず、震度6以上の強い揺れを受けても”住み続けることができるレベル”なのかどうか、ぜひぜひ確認してほしいと思います。

「ぜひ確認を」といってもご自身では到底構造計算や耐震診断はできないと思いますので、

知り合いの工務店や建築士に相談し、図面を渡して(図面が残っていない場合も多数ある)場合によっては耐現場での調査も併用して、耐震診断を行うことを強くおすすめします。

わたしも実務で木造住宅の設計を行っておりますが、ほんの一部、90cm程の幅の壁を強化しただけでその家全体が劇的に強くなったり、この家のココが弱点になっいて、そこに柱1本建てるだけですごくこの家は強くなる!、なんてことを感じながら設計を日々行っております。

「ここに柱を立てるとこの家劇的に強くなるんだけど、今更お客さんには言えないよなー」

と思うときも若いころは正直多々ありました。

住宅の設計は「間取り」が中心的な作業で、構造は後回しになっています。

間取りを先に決めるとどうしても構造に無理が生じ、ここには壁は作りたくない、柱は立てたくない、ということに必ずなります。

そうならないために、本来は構造の設計が先で、重要な柱や壁を配列したあとに部屋を配置するというのが正しい手順ではあるんですがなかなかそうはなりません。

建築士は仕事欲しさに施主からの間取りの要望を最大限採り入れようともしますし、住宅営業の初期段階ではどうしても間取り中心の打ち合わせになるからです。

 

地震とつきあってゆかざるを得ない日本。

これからは構造ファーストの家づくりを肝に銘じて、そこに間取りを、そこに省エネ性能を。

そんな家づくりが求められています。

耐震性の確認は、コンピューターソフトの進化でかなり短時間でできる環境になっています。

これから新築する方は当然構造計算を行うこと、既存で住宅を所有している方はご自身の家がどのくらいの耐震性があるのかまず把握し、どこが弱点なのかまず知ることから始めてほしい。

ニュースでは全壊している建物しか映し出しませんが、壊れていない建物だってすぐお隣にあったりするんです。

日本中どこでも巨大地震が起こる可能性があります。

建築士は直接的ではないにしろ、人命にかかわる仕事をしているという自覚をもって設計を行うべきなのです。

自戒の意味を込めて。

 

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