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「長野県は2030年までに新築全棟ゼロエネ」は可能なのか?

2021.09.18|Q1.0住宅|断熱職人
塩原真貴

現在、上田市で建設中のZEH住宅。断熱をガンバったうえで、6KWの太陽光発電パネルを屋根上に。

現在、上田市で建設中のZEH住宅。断熱をガンバったうえで、6KWの太陽光発電パネルを屋根上に。

長野県のホームページに、「2030年までの長野県_住生活基本計画」の素案が発表された。

現在パブコメ公募中である。

その中に当然住宅に関する方針も示されているわけで、新築の建物のうち全棟がZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)が掲げられいる。

2050年までにゼロカーボンを達成しなければならない、

さもなくば地球が大変なことになる、当然そこに暮らす我々も・・・、というのが大儀である。

持続可能な社会を目指すことに異を唱えるつもりは毛頭ないが、

ZEHへの適合義務もない中、自主取り組みだけで果たして達成されうるのか、どのくらい高いハードルなのかを考えてみたい。

 

 

敷地にゆとりがあり、陽当たり良好。果たして6KWも必要なのか?

敷地にゆとりがあり、陽当たり良好。果たして6KWも必要なのか?

現在Rebornで建設中の、上田市F邸を例に深堀りしてみてゆこう。

まずは冷暖房の燃費計算書(使用ソフト:新住協・QPEXVer4.0)

 

この家の外皮性能Ua(断熱の力)は0.26。

外壁に21cm厚の高性能グラスウール断熱材。床に24cm、天井に30cm、窓には樹脂サッシのトリプルガラス。

1階南側の大きな窓には屋根がかかっているので、冬の日射はある程度遮られてしまうので、ガラスを通して室内に入る熱はさほどではないが(パッシブハウスとは言えないレベルであるが)、屋根上に設置された太陽光発電パネルがそれを補うにはあまりある。

断熱の力がかなり強いため、ご覧のように、年間を通しての冷暖房エネルギーは1500kwh程度である。

 

この屋根の上に太陽光パネルを24枚載せる。1枚が250W発電するので、250*24=6000W=6.0KW

この屋根の上に太陽光パネルを24枚載せる。1枚が250W発電するので、250*24=6000W=6.0KW

この家では補助金(地域型住宅グリーン化事業・ゼロエネ型)を取得する予定なので、太陽光発電パネルは6.0KW分が必要となっている。

いつもの如くパネルヒーターによる全館暖房を前提としているため、計算上は6.0KWも載せないと計算上はゼロエネにならないというところに疑問・不満は大いにあるが、全国共通の計算プログラムを使用しなければいけないルールなので、南に向いた2階の屋根全面にパネルを設置する。

果たして年間の発電はどのくらいか。

パネルメーカー:Panasonicの発電シミュレーションがこちら。

8,131kwhと、ものすごい発電量をたたき出している。

前段で、この家の年間冷暖房は1,500kwhと書いた。

ほかに何があるか?

給湯(お風呂や台所が主)、照明(LED照明の採用で、さほどではないが)、調理(キッチンコンロ)、家電(TVや電子レンジ、冷蔵庫、トイレ便座など)。

各家庭の人数や利用状況によってかなりばらつきがあるが、8131-1500=6,631kwhも使うはずがないとは思う。

月平均で550kwh、¥30/kwhとして¥16,500/月 !そんなに使うはずなし。

 

外壁はもっとも断熱面積が大きいので、ZEHにするために付加断熱は必須

外壁はもっとも断熱面積が大きいので、ZEHにするために付加断熱は必須

太陽光パネル6.0KWも必要がないはずだが、世の中のしくみ上仕方ない、

と建築主に説明し、余った分は中部電力に買い取ってもらうわけなのだが、買い取り単価も毎年安くなっているから、蓄電池を検討しないわけではないが、まだまだ設備費が高く現実感がない。

せめてお隣や近所のおじさんに、まるでたくさん収穫できたトマトを分けてあげる感覚で配れると温もりのある日本になるような気がするのだが、河野さん(大臣)どうだろうか。

ちなみに私が持ち合わせている発電量シミュレーションソフト(ホームズ君省エネ診断)に入力すると、発電量はやや低く出た=7,466kwh

この誤差(?)はけっこう大きいと感じたわけで、果たしてどっちが正しいのかは入居後の1年データで判明するわけであるが、過去の経験からメーカー(この家の場合はPanasonic)のデータの方が近似することが分かっている。

1棟で窓点数はできるだけ15~17窓にしたいと常々思っている。
20窓になるとけっこう多いな~、と思うわけで。

1棟で窓点数はできるだけ15~17窓にしたいと常々思っている。 20窓になるとけっこう多いな~、と思うわけで。

このシミュレーションソフトを使って、長野県の優位性を確認してみたい。

同じ建物を別地域で建てるとどうなるか、ずらりと並べてみる。

上田市も相当すごいが、佐久市はもっとすごい!

松本市・伊那市もすばらしく、逆に長野市は芳しくなく(自虐的見方が多分に)、豪雪地飯山市は、長野市とそん色ない。

 

最近はトリプルガラスが普通になってきた。

最近はトリプルガラスが普通になってきた。

他県ではどうか?

なんと、上田市、佐久市は甲府市を上回る発電量!

なんとなく「もっとスゲーだろうな」とやってみた宮崎市は長野市以下!

わからないのものですね。

こうなってくると長野県はやはり太陽光発電に向いているときっぱりハッキリ言えるかと思います。

木造住宅の欠点。それは柱や梁がたくさんあるため、熱橋が多いことです。
それを補うのが付加断熱。

木造住宅の欠点。それは柱や梁がたくさんあるため、熱橋が多いことです。 それを補うのが付加断熱。

全国的にみて、長野県はZEH向きであることが分かりました。

加えて太陽集熱で給湯を補足したり、森林が豊富なのですから薪ストーブなどのバイオマスエネルギーを暖房として加えると・・・、まさに無敵。エネルギー自立も夢ではないかも。

もっと少なくてよいはずの太陽光発電パネルで昼間はバッテリーへチャージ。

夜間はそのバッテリー(蓄電池)から照明や調理、家電に利用。

暖房は太陽集熱で蓄えた温水を熱交換し室内に放熱+薪ストーブ。

断熱を十分に行った家では、まったく不可能ではないと感じる。

2030年とはいわず、すぐにでも棟数を重ねてゆくべきZEH。

あのにっくき建築研究所の一次エネルギー消費量計算プログラムは補助金用ときっぱり割り切り(ホぉっておいて)、

独自計算によって各棟で最適なZEH組み合わせを編みだし、建築主を説得し、電力会社や燃料屋さんからできるだけ

買わないような(エネルギー自立)家づくりをしてゆこうではないか。

問題は断熱の力が圧倒的に不足している既築の住宅だ。

こっちはかなり難題である。(でもこっちのほうがエネルギー消費、圧倒的に大)

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