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建築における仲人【分離発注での私の立場】

2012.08.25

この秋、集中的にリフォーム工事をさせていただく小川村のO様邸。リフォームとはいえ、約1カ月間、みっちり設計打ち合わせをさせていただきました。築40年の既存住宅を、さて、どのくらい手を掛けるか、どのくらいお金をかけるか、そのあたりがポイントなのです。 床、壁、天井といった内装はそのほとんどが更新され、キッチンや浴室も生まれ変わります。また、ほとんど効いていない断熱材もそっくりやり替えて、高断熱住宅への変身=つまり省エネ住宅、温水パネルヒーター全館暖房+薪ストーブ、というあこがれの住空間を目指します。 延べ床面積64坪というかなり大規模な改修工事なので、当然予算的なものが問題になります。新築ならば解体費で300万程度かかると思われ、また64坪の新築木造住宅を坪50万としても3200万円です。一時的な引っ越しもしなければならず、4000万近くの予算が必要と思われます。 今回はその1/2の予算で、あと30年を安全に、快適に暮らせる住宅を目指します。 今回の工事の進め方も、分離発注形式としました。 「分離発注」、という言葉は、私たち設計に身を置くものたちからすると理想の形なのですが、一般的にはなじみがありません。家づくりのほとんどの発注形式は、「建築請負契約」、という手法で行われています。建築主は、ハウスメーカーや工務店に設計と工事を一括して発注し、請負人=つまり〇〇ハウスや〇〇工務店が、各専門業者や職人に下請けとして発注する形態です。 私も以前は、〇〇ハウスに長年勤めていましたので、普通に建築請負契約の下、自社設計をして、自らが設計した建物を完成させるために、たくさんの専門業者に発注して、現場を運営していました。工務店側は、取引のある各専門業者に見積もりを取り、その金額に20%~30%を上乗せし、さらに会社経費(従業員給料や社屋の家賃…その他もろもろ)を上乗せし、お客様にお見積書として提示しています。設計料は全体予算に含む、といったこともしばしば。この場合の最大のメリットは、責任の所在がはっきりしていること。(それでも建築途中で倒産し、返金されないこともある)デメリットは、大工さんや電気屋さんなど、実際に手を動かしてその家をつくる人の顔が見えない、予算が不明瞭(どのくらいのお金が実際に職人の手に渡っているか不明=工務店・メーカー側が、どのくらい利益をとっているか?)そして、構造的にどうしても施主VS.建築屋、という構造になってしまうということだと思っています。 分離発注とは、オープンシステムとも呼ばれますが、とにかく、施主が自ら家をつくる、ということです。かつては地元に専門の職人(業者)が軒をならべ、大工棟梁は〇〇さん、屋根なら〇〇さん、材木は〇〇さんのところに、など代々続く家は、お抱えの職人がそろっていた、と聞きます。家長である旦那さんが、お気に入りの職人に、直接注文し、棟梁がそのまとめ役をしていた。その地の里山から木を伐り取り、製材屋が製材し、長期間乾燥させ、晴れて建て方の時には施主はもちろん、近所の人たちや、兄弟や親戚など総出で作業をしたそうです。旦那方式とも呼ばれています。つい数十年前まではそれが当たり前の家づくりであったわけです。   現在の家づくりに関する手法や情報量は、構造計算や設計手法も多様化し、設備もさまざまです。建築主が一生懸命に勉強して答えを導きだせるレベルではありません。そこで設計士という職業の人間が、自ら得てきたノウハウや考え方を施主にアドバイスし、いわば仲人として動き、各専門業者・職人へ働きかける。そして施主が直接その職人に発注する、とそんなことができないものでしょうか?施主が、友達のAに水道工事をやってもらいたい、知り合いのBから木材をかってもらいたい、というのも当然ですが、アリです。 家づくりは、そこに暮らす人が、もちろん主役です。なにせそこに何十年も住み続けなければならないのですから。納得のいかない家づくりでなくてはなりません。真に納得のいく家に住みたいのなら、自分でつくること。これが分離発注形式の原点です。 前置きが長くなりましたが、小川村Oさまにもこの考え方をご理解いただき、実行していただいています。ありがとうございます。 そして、実は多くの職人がそれを望んでいること。意外とこのことが知られていません。職人は当然ながら施主に喜んでもらえることを最大に望んでいます。請負形式ですと、職人は施主にあいさつこそしますが、それ以上の工事内容のことや、お金のことはタブーなのです。 本日、大工の棟梁の鍋内さんと施主のOさんが弊社にて正式にご契約。つまり結婚みたいなものです。(笑) 注文金額や支払い条件なども直接話し合って取り決めます。大工は正確に精一杯工事をOさんのために、手を動かす。施主はそれに見合う対価を支払う。ただそれだけなのです。   そして今回の工事の要である、断熱・暖房・換気工事などを担当する信越ビーアイビーの国分さんとも。 一つ一つを確認していきます。       私はと言えば、仲人らしく、お互いが率直に意見交換できるように、工事の内容が分りやすいように、お手伝いをするのみです。もちろん図面までは当然描きましたよ。設計図は工事がスムーズに進むための必須アイテムですからね。   それでも今回の基本的な図面を敷き並べると、このくらいにはなりました。 新築の場合はこの倍程度にはなります。       リフォーム前の、既存の平面図。           仕上げ表。各部位ごと、各部屋ごとどのような素材のもので仕上げるかを示します。改修工事をする場所、手を付けないところも分りやすく示します。         平面図。A3の用紙に1/50の縮尺で入りきらない・・・。相当でっかいお宅です。1/60になりました。         立面図。           電気配線図。 照明やスイッチ、コンセント、テレビ、電話の配線のことも当然いろいろとありますものね。       家具など重要な部分の展開図。 実際にこの図面を見て造作家具をつくります。         スプレーのりを使って、製本とします。 A4サイズになり、持ち運びも楽々。 工事中は毎日のように見ますので、工事が終わる頃にはボロボロに・・・。       工程表も当然お示しします。 工事が予定通りに進むためには、各業者が動きやすいように工程表が必須です。         自分で言うのもなんですが、私、図面を描くスピードは天下一だと思っています。 お客様との打ち合わせが9割で、それを図面化するのは1割程度です。そして徹夜近くで一気にワァ~っと集中的に。それがミスなく、早く描くコツだと思っています。   いよいよ工事が始まります。工事工程は、こまめに情報をアップしていきます。乞うご期待。  

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