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基礎断熱工法について所感

2017.03.28|断熱職人
塩原真貴

最近は床下エアコン暖房など床下空間を利用しようとするメーカー・工務店が増えてきました。

それに伴い、基礎断熱を実践する、あるいはせざるを得ないケースも増えています。

もともと凍結深度が深い地域で、床下が半地下になるのでもったいない、 ここもボイラー室や物置で利用できないか、 そんな発想から、日本では基礎断熱工法は北海道発で広まっていったと認識しています。

実用はまだ30年ほどの技術で、断熱材を外側に張るべきか、リスクを考えて内側に張るべきか、 各社迷いながら施工している、というのが本当のところではないでしょうか。  

今年初頭にドイツに行きましたが、ほとんどの建物で地下室があり、機械室や物置として利用しているそうです。

ドイツも北海道も、シロアリが生息しておらず(最近では北海道でも被害が確認されています)、基礎の外側に発泡系断熱材を張ることが多いです。

本州では、各メーカーから防蟻材が練り込まれた防蟻処理済みの発泡系断熱材が発売されていますので、大多数の作り手はそれらを採用しているのが実情です。

しかし、それらのボード状断熱材は畳ほどの大きさであり、その継ぎ目や、給排水の貫通部は少なからず隙間がありますし、材料そのものも紫外線で劣化しますから、モルタルなどで化粧することが多く、 その間からシロアリが這ってゆくという可能性も否定できません。

人間の仕事にパーフェクトはないというのもだれもが知るところ。

リスクをできるだけなくすよう、細かい部分まで目を光らせての基礎断熱工事となります。

リスク以上のメリットが何かないと、 たとえば気密性を抜群にとるんだとか、 床下にエアコンを設置して、暖房工事費を抑えつつ、床の表面温度を上げるとか、 基礎コンクリートに蓄熱させて、室内温度の安定につなげるとか・・・。  

私は10年程前に自宅を建てました。

計画段階で基礎断熱を検討し、結論的にはグラウウール100mmを基礎の外側に張り付け、モルタルで化粧しています。

グラスウールを用いたのには当然ワケがありますが、地面が粘土質だったため、排水工事にけっこうおカネがかかりました。

当時は床断熱工法しか施工したことがなく、ある意味実験的に試みたのです。

暖房は温水パネルヒーターです。床下放熱や土間蓄熱は行っていません。  

個人的な評価として、

・1階床の表面温度は床断熱の場合と比べて1~2℃高くなるので、あたたかいと感じる(床下の温水パイプから放熱する熱を室内にとりこめるので、ロスがない)

・期待していた、「夏のオーバーヒート緩和に効果がある」は、実感をほとんど感じない

・工事費は、雨水の排水工事費が思いのほかかかり、20万円程度は余計にかかった

・床下コンクリートが持つ水分が膨大で、初年度は床下で結露しやすいので、工事中はずっと除湿器を運転。面倒だと感じた

・床下点検はとてもしやすく(徹底して掃除を行ったので)、初年度のコンクリート臭も懸念されたが、ほとんど感じることはなかった

・冬でも床下が暖かいので、ユニットバスの洗い場床裏や浴槽裏に断熱をしなかったが、浴槽の湯は冷めやすく、やっぱりそこは断熱したほうがいいのだと感じた ・1階床になにか物を落とすと、床下で反響音があり、最初は違和感があった(もう慣れましたが)

・逸れた話ですが、床にネダレス合板を張ったので、床が堅いと感じた。膝があまりよくないので、床は柔らかいほうが好み(木が”しなる”性質を利用)  

総合的には、コスト高の割りにそれほどメリットがないのでは、と感じた。

以降、床断熱工法を基準に考えてきた。

床断熱工法の最大の弱点は、柱や間仕切り、それに電線や配管の床貫通部の気密処理が面倒だということ。

ここさえちゃんとやれば、C値は1.0は必ず切れる。

0.5以下を目指すのであれば、やはり基礎断熱の方が手っ取り早い。  

これまでも、多くの方から計画段階でよく質問を受けるポイントなので、参考にそのやり取りを掲載させていただきます。  

 

Q.

>床断熱でプランニングされていますが基礎断熱については我が家では推奨できますか?

>冬場の室内の乾燥が気になっています。基礎断熱にして床下暖房でガラリをつけると

>湿度が安定すると聞いていますがどうなんでしょうか?

A.

基礎断熱の一番の懸念はシロアリです。

発泡系断熱材を基礎の外側に張る場合は、かなりの高確率で喰われます。シロアリ専門業者がそういいますから、ある意味彼らのえじきになっているともいえます(笑)

グラスウールを外張りする、あるいは基礎の内側に発泡系断熱材を張る、という方法もございますが、コスト的に高くなります。気密性能は出やすいので、最近は採用しているメーカーや工務店も増えていますが、基礎業者、設備業者など関連する業者たちも基礎断熱を正しく理解していないとだめです。

近くに川がある状況をみても、地下水位が高い可能性が残ります。(地盤調査で地下水位はどこかわかります)

シロアリは非常にやっかいです。基礎断熱は日本では北海道から始まりました。北海道はシロアリがいません。(最近になって札幌で少し被害が出始めています・ドイツには生息していません)

現実的にシロアリ対策として考えられる手法もあります。

ベイト工法と言いますが、疑似餌(たしかシロアリが非常に好む柳の木だった記憶があります)を建物の外周に数mおきに設置し、定期的にシロアリの有無を観察。シロアリがもしいれば毒に置き換えて巣ごと駆除するという手法です。防蟻材を練り込んだ発泡系ものも発売されていますが、全国的に見ても相当の被害が確認されており、関東のようにシロアリの活性度が高い地域では腰が引けます。

製品の歴史も浅く、まだ採用は時期尚早だと考えています。

かといって床断熱だから安心というわけではありません。配管貫通部や基礎の打ち継ぎ目から侵入するケースもあります。ただ、点検しやすいという利点はあります。基礎断熱で発泡系のシロアリ被害は、たいてい発見が遅れ、相当被害が拡大してから発見されるので、保険に加入するとはいえ修繕費が膨大です。生活者への負担を考えると保証があるから、というのはどうかと思います。

一方、室内湿度の安定ということで検討すると、第1種換気にゆきあたると思います。 熱だけでなく、湿度も移動させているものもありますが、メンテナンス(フィルター清掃)を怠ると衛生的ににやばい状況になります。ここにも相当深い話があるのですが、今の私が持っている持論でお話しをすると、換気は第3種がいいだろうと思います。(お客さんの負担が少ない・汚れた空気を室内に給気する可能性が低い)ただし、気密性を高くもたせ、風量を簡単に変えられるシステムのもので、電気料金があまりかからないもの。室内の過乾燥はやはり加湿器にたよるべきだとも考えています。そちらでしたら、長野よりも内外の温度差が少ないので、加湿器は1台、もしくは寝室にもう一台、程度だと思います。

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長文ご閲覧ありがとうございます。

このブログについてこれた一般の方は相当なマニアだと自負してください。

建築関係者でもあんまりピンとこないかもしれません。  

基礎断熱工法はメリットも当然ありますので、今後も研究してゆきたいと思います。 なんせチキンなんで(笑)

※基礎断熱+床下暖房を実践する場合はUa値=0.3以下にしないとアカンです^^  

2017.3.28 Reborn塩原(毒度7)  

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