
長野市内・中古住宅をインスペクションしました。
残っていた書類によると、築37年→昭和55年に建築確認済証が発行されています。
いわゆる既存不適格住宅と言われているんですが、昭和56年6月1日に建築基準法の新耐震基準が施行されたため、 昭和56年5月31日以前に確認済証が発行されている住宅は、一般的に耐震性が低いとされています。
なるほど、この日を境に耐力壁と呼ばれる耐震用の壁が少し増えることになります。
このブログを読んでいただいている方の中で、もし昭和56年以前に新築した家に暮らしている方がいらっしゃれば、ぜひ市町村が窓口になっている、無料耐震診断を行ってください。

インスペクション(既存住宅現況調査)のガイドラインでは、 ”床下点検口より覗いて状況を確認する”とされていますが、床下や小屋裏など普段誰も目にすることができない箇所は、潜れる範囲はできるだけ調査するようにしています。外側はさまざまな物品やデッキ、犬走り土間コンクリートなどで発見が困難です。
また、このお宅もそうでしたが、基礎の外側には化粧モルタルと呼ばれるファンデーション(モルタルデスガ・・・)で基礎の状態が良く分からないことしばしばです。
「建て替え新築すべきか? リフォームでいけるのか?」 の判断をする際、非常に大きな要素が基礎の状態だと思うのです。
調査する側としても、正直、調査中はずっと心が揺れ動いているはずです。
リフォームで対処する選択をし、解体を進めていったら 「やっぱりこんなにたくさん想定外があるんだったら、建替えたほうがいいのでは?」 という風にならないためにも、床下は時間をかけて、しんどくても調査を念入りにすべきです。

脱衣室からお風呂に入るドアの枠には、明らかにシロアリ被害の痕跡がありました。
ならばこの直下の土台はそれなりに被害を受けているわけで、 「どのくらいやられているのか?」を依頼主側はかなり気になりますよね。
でも、インスペクションガイドラインによる”床下からのぞける範囲からの調査”で、この明らかに蟻害があった場所が見えない場合もあるわけで、調査をする義務も本当はないのです。
最終的には被害状況の全貌を知るには、浴室全体を壊してみないと分からないわけですが、 あとはもう調査する人の自主性と先見性、それに経験値に頼るほかはありません。

もちろん行きましたよ!(笑)
でもぱっと見にはそれほどの被害状況ではありません…。
そこで、転がっている石を握りしめて打診検査。
・・・、やられてる・・・汗
キャベツを叩いているような感触、そしておが粉ぽろぽろ・・・。

侵入経路は異なりますが、ほかにもシロアリがいた痕跡を発見。
こちらはそれほどでもない感じ。リンゴを叩いた感触です(笑)
こいつらの悪いところは、決して自らの存在をアピールしないところ。
こんなにも地球上の有機物を分解し土に戻すという離れワザを持ち合わせているのに、決してそれを自慢しない、見せない、誇らない(笑)

天井裏もぜひ”点検口から身を乗り出して観察できる範囲”にとどまらず、行けるところまでは行きたいところ。
そうはいっても、天井を踏み抜いてしまったり、おもらししてシミを作ったんじゃ元も子もない。
ガイドラインでは全域調査は義務にしていません。

床下もそうでしたが、天井裏も断熱材があるところとないところが混在していました。
気流止めは当然ありません。ちなみにインスペクションは断熱材の有無やその施工精度などはまったく調査対象になっておりません。
今後は省エネリフォームの時代ですから、ぜひ主要構造体や雨もりのみに焦点があるインスペクションではなく、 断熱材の有無や施工状況を調査する、省エネインスペクションも同時に行うべきかと思いますがどうでしょうか。