長野市は昨日35℃近くまで気温が上がりました(*_*;
今年も猛暑ということになるのでしょうか?
標高800m近い長野県内のとある場所で、わたしはインスペクションを実施しておりました。
流石にここは涼しいだろうと踏んでいたのですが、30℃は超えていたハズ。
築年数不明の古民家。
中古物件としてこの家を購入をすべきかどうかの判断材料として、購入検討者からのインスペクション依頼です。
赤いモルタルに黒い石をランダムに散りばめた前オーナーの粋(いき)な玄関。
この時期は何も感じませんが、外の土間コンクリートと一続きでは冬の寒さが心配です。
インスペクション作業では一般に断熱性能のことは評価しませんのでスルーすべきですが、 断熱職人の商標を戴いている身からすると見過ごすわけにはいかないのです。
かといってこの時代に基礎断熱という言葉すらも存在せず、家の外と中をつなぐ玄関に、 「熱を絶つ」という発想は皆無でした。
玄関は風除こそすれど、暖かい空間であるはずもなかったのです。
「こんにちはー!既存住宅状況調査技術者(インスペクションを行う人の正式な名称)のシオハラです!」 (トイッタカドウカハワカリマセンガ)
屋根から調査を開始!
雨漏りがあったという屋根は数年前に葺き替えたそうで、瓦自体は良い状態ではありますが、屋根面全体が波打っており、 この屋根を葺き替えた職人が苦労する姿を想像できます。
いや、板金屋根だったらもっと大変だったかもしれません。
瓦は一枚一枚の部材としては小さいので、下地の状態が悪かったり、納まりが厳しい箇所も、 瓦を部分的に加工したりしてなんとか納まってゆくものかもしれません。
屋根の上はアカシアの花粉でしょうか。チョークのような黄色の粉が足元を滑りやすくしていました。
ちなみに私は、アカシア花粉では発症しません。
推定築年数はまあせいぜい70年くらいか。
仲介役の不動産屋さん曰く、 この建物、元は公民館だったそうで、この土地に移築したらしい。
図面もなければ登記簿もない。履歴が全く不明なのです。
やはり今後中古住宅を世の中に回してゆくうえで、設計図の保管は重要だと思います。
図面が残っていないと耐震診断もあいまいなものとなり、我々耐震診断士も結局はキビシイ側で判断せざるをえないのです。
これまで(移築されてから)外壁や躯体は一度も手を加えていないように見えますが、しっくいの壁は非常によろしい。
軒の出が深いこともあるでしょうが、土壁下地は割れや欠けもあるものの、 まだまだイケる感じです。
柱や梁も真壁となっており、経年で焦げ茶に変色していますが、ピンピンしています。
惜しい!!
瓦屋根を葺き替えた際にルーフィング(防水シート)と野地板は替えてほしかった!
ここでもやはり破風板は朽ちていませんでした。
杉板でしょうか。
長年風雨にさらされては来ていますが、再塗装などは一度も行われてこなかったはずです。
表面は風化し、いわゆる浮造りになっていますが、腐っているわけではありません。
留めつけている3寸釘も真っ赤に錆びてはいますが、まだまだ固定能力は十分です。
トタンの屋根は過去に塗装が行われた形跡があるものの、 だいぶサビが発生してよろしくありません。
この中古物件を購入したら最初に行うべきリフォームポイントです。
屋根に穴が開き、雨漏れが起こると、そこに暮らす人は非常にブルーな気分になるものです。
ですからインスペクションでは、現状の劣化状況を観察するとともに、 雨漏れのリスクに対する評価をとても重要視しています。
観察の眼を地上に戻します。
土台、基礎、柱、外壁。
土台は栗材でしょうか。ここも材木は当然変色していますが、腐っているわけではございません。
モルタルは一部剥がれ、土壁が露出していますが、大したことはありません。
最重要なのは土台。
移築した際に用意された基礎は無筋(鉄筋検査機を使って基礎コンクリートの中に鉄筋があるかないか調査できる)ですが、大きなクラックはありませんので、地盤は良好だと判断。あわせてこの地域の地盤の特性や、周辺ボーリング試験結果を地盤コンサルティング会社より情報提供を受け、ハザードマップなんかも併せて観て判断材料としてゆきます。
そうはいっても箇所によってはこんな風になってしまっているところもあり、 評価としては、「土台の腐朽あり」となってしまいます。
この場所は北西の角にあたり、土台まわりが風雨にさらされる状況が多いらしく、また日照も良くないので乾きにくく、腐朽が進んでしまったと考えられます。
上を見ると雨といがかかっているのですが、おそらく詰まったのでしょう。
軒樋からあふれた雨水がジャバジャバとここを濡らしていたと考られます。
雨樋、けっこう重要ですね。家にとってトイは水の通り道ですからね。
塩原流インスペクションの代名詞ともいえる”床下調査”は、 残念ながら進入口がなくて断念しましたが、小屋裏です。
曲がり松丸太が効果的にこの家の屋根を支えています。
屋根の荷重(重量)を外壁に伝達する役割を担うと共に、 家全体が歪まぬよう、骨としての意味もあります。 と呼んでいます。
四角くまっすぐな製材しか見かけない現代において、 くねくね曲がった松丸太は、古民家の象徴としての印象が一般の人にあろうかと思いますが、 曲がった材料は建築資材としては劣等で、このような小屋裏など、普段目にすることがない箇所にしか使えないものであったのです。
最近、非常に便利なものを購入しました。
デジタル水平器です。
けっこうな金額するんですが、デジタル表記で傾きが表示されます。
垂直や水平が出ていると、ピッピッと音も鳴ります。
家の中の柱や床に対してどんどん当ててゆき、この家の全体的な歪みの状況や傾きの傾向を知ることができます。
傾きの程度も○○°とか、△/1000㎜などとモードが切り替えられ、これまでは下げ振りを使ってけっこう時間を使っていましたが、 誰でも簡単に取り扱うことができ、かつ数字として正確に評価できるので重宝しています。
中古住宅購入前の、購入検討用のインスペクションは、 その物件を販売しようとしている売り主さん・媒介に入っている不動産屋さんと、買主(購入希望者・検討人)とのハザマで、 立ち位置としてはある意味難しいわけですが、 まっしろな第三者的立場でその建物を評価し、 現状を知ってもらうということさえ遵守してゆくのが大原則。
顔色をうかがうような調査はしたくありません。
最近では、この家に暮らすとどのくらいの冷暖房費がかかるのだとか、暖房を消して就寝した場合、室温が最低何℃くらいになりそうだとか、 そういった省エネ性能に関する質問をされることも多くなってきています。
空き家が急速に増える今後、インスペクションの内容はさらなる進化を遂げてゆくことになるでしょう。
いや、診断内容も精度もどんどん進化してゆくべきだと思います。
長野県では中古住宅に対するインスペクションについて、最大で10万円の助成をおこなっています。
ただし助成金が出るのは、「売買契約が成立した場合に限る」とされています。
ここ、とても重要な点ですが、パンフレットに明瞭な記載がありません。ご注意ください。
願わくば、売買契約が成立しなかった場合は2万円などとすれば、インスペクションは今後活性化し、中古住宅を検討する方も選択肢が増え、インスペクターの技量も進化を遂げると思うのですが・・・。
中古住宅検討用のインスペクションを終え、 結局、買うか買わないかはその物件の金額次第、ということになろうかと思います。
ここは修繕すべき&いくらくらいかかりそうだ、というような提示も併せてできないと購入判断ができないだろう、 というのもまた事実であるわけです。
2019.5.28 Reborn塩原
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