築100年以上の古民家をインスペクションする機会に恵まれました。
図面も記録もないのではっきりとしたことは全くもって誰もわからないのですが、 現在の家主は8代目。染物屋→養蚕→農家→サラリーマンと続いてきているとのこと。
その暮らしを支えてきたのは、なんといってもこの家です。
数々の増改築を繰り返し、住み継がれてきた木造軸組み工法。現代のそれとかわりません。
リノベするならどの範囲まで解体すべきか、親世帯子世帯の同居を目指すならばどうすべきか、 そのような観点から調査依頼をいただきました。文字通り”恐縮”です。
煙出しの越し屋根を持つ瓦葺きの東西に長い切妻屋根。
この外観デザインは平成が終わろうとしている現在でも脈々と受け継がれてきており、おそらく躯体の90%以上は新築当時のものであり、 風雨豪雪に耐え、シロアリや腐朽菌からの食害に耐え、松代群発地震に耐え、おそらく善光寺地震にも耐えてきたのではあるまいか。
ある意味重要文化財的な価値のある建物の調査、ワクワク感がこみ上げます。
圧倒的素材感漂う土蔵の壁は、一部剥がれているのがまたいい雰囲気を醸し出しています。
土蔵の壁は土でできている。
当たり前ではありますが、失いたくない日本の風景の一つです。
これをインスペクションのガイドラインによれば「外壁の劣化」とみなして報告書に記載、補修あるいは維持管理の強化を行いましょう、という風にもってゆくのです。
ま、それはそうなんだけれど、そういうわけにもいかんぜよ、という私情が入るのもまた事実。 あ
らゆる部分に職人さんたちの真心、誠意、腕利きが感じ取られ嬉しくなりました。
昨今はひどい職人不足が続いていますが、こんなの壊しちゃえじゃなく、修復・保存してゆきたい、と考えるのは愚かなことでしょうか
土台も「こりゃひどい」とは片付けられません。
よくぞ持ちこたえている、よくぞ腐らず、シロアリ被害にもあわずここまで来れるものだと驚嘆します。
「こえ~こぅえ~よ~」 と察しのよい新人ナカソネは、床下をのぞき込んではこちらにアピールしてきます(笑)
「はい、じゃあ、潜って!」
コンクリートというものは当時なく、支えは当然天然石。
床を構成する部材はすべて材木。
そこかしこにあったものだけで作られているんですから、これぞエコ。
人間のための家ではありますが、猫や鳥などの小動物の住処も同時に作ってあげている現実があります。
「ゆかした」は、人間界と自然界のちょうど境目であり、蜘蛛の狩場でもあるわけです。
土壁だっておそらくはこの土地の土で出来ているのではあるまいか。
植物の茎やもみ殻を混入させ、少なからず寒さに耐える断熱材としての役割を兼ねていたはずで、 崩れ落ちては塗りなおし、より防火性・美観性を高めようとしっくいを塗り、柱は交換できるよう、あるいはデザイン性として常時見える真壁造に。
どの部分も簡単に復活させることができるように作られているのです。
屋根は数十年前に瓦を載せ替えたそうで、野地板は更新された様子です。
旧来の部分はススで真っ黒。燻煙されて防虫効果ますます、強度が増しているようです。
たかだか45年しか生きていない自分。
100年以上もこの家に暮らす人々を守ってきた柱、梁。
どう考えても私の立場は新人くんです。
障子を照らす午後の弱い日差しも絵になります。
この戸を開けると広縁があり、庭には老木の松が右斜め45度の傾斜で立っています。
いったい何人の客人がこの座敷を訪れたのでしょうか。
そしてどんな会話が、どんな説教があったのでしょうか。
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