山梨県にQ1住宅初上陸! 3年後のいま
快適な住まいについてとことん勉強し、自分たちの理想を実現してくれる住宅会社を求め、隣県のRebornにたどり着いたという山梨県甲府市の守矢さんご夫妻。塩原さんも、初めて会った時から勉強熱心さと豊富な知識量に驚いたと話すほどマニアックなご夫妻の家づくりは、高気密・高断熱のみならずエネルギーにまで着目し、こだわりが凝縮していました。
性能も素材も相性も、全てに納得がいく「新住協」の会社探し
守矢邸があるのは、Rebornのある長野市からクルマで約2時間という距離の山梨県甲府市。守矢氏というと諏訪地域の氏族の名字で、代々諏訪神社上社の神長官を務めてきた社家でもあります。その社家にルーツがあるかは不明だそうですが、夫・学さんのご両親は長野県出身なのだとか。とはいえ、おふたりはともに甲府市出身・在住。Rebornにとっては長野県外の新築第1号です。
シンプルな切妻屋根の総2階の守矢邸
外壁はRebornおなじみの西洋漆喰左官仕上げ
甲府市は盆地に位置し、夏と冬の寒暖差が激しいという点では長野県と気候が似ているものの、夏はたびたび猛暑日に見舞われ、高気温がニュースになることも少なくありません。晴天率の高さや豊富な日照量でも知られています。
守矢さんご夫妻の希望も、もちろん夏涼しく冬暖かい家。ですが、それだけではありません。高気密高断熱の家づくりにこだわり、Ua値やQ値、さまざまな断熱材の特性、換気方法、建材などを徹底的に勉強したご夫妻にとっては「信頼して任せられる建築士がマストでした」と話します。
そこで、まずは守矢邸の家づくりに至るまでの経緯をご紹介します。
結婚後にアパート暮らしをしていたものの、床がとにかく冷たく、すぐに暖かい家づくりを検討するようになったというご夫妻。当初は妻の有貴さんの親族の土地での家づくりを見据え、住宅会社を探していました。しかし、その土地の話は頓挫。それでも一度火がついてしまった家づくりの情熱は止まらず、土地を購入して住宅会社探しを続けていたのです。
購入した土地は市道の高架橋近く。晴れた日は富士山が望める
当初、有貴さんが希望していたのはハウスメーカーでした。
有貴さん:
「周りを見ても自分の実家もハウスメーカーで建てていたので、それが普通だと思っていました。見た目もきれいで、そこからわざわざ外れる必要はあるのかなと感じていましたし、ハウスメーカーのブランド力がもつ安心感がなんとなくありました」
一方で、学さんはブログなどインターネットの情報から高気密・高断熱について調べ、その後、図書館に通って住環境コーナーでより深い知識を修得。そのなかでQ1.0住宅を提唱する「新住協」を知りました。そこで「新住協」に加盟する会員を探し、宮城県仙台市の本部にも連絡を取って、山梨県内にあるふたつの新住協会員の工務店を訪問。質問攻めにして、さらに勉強したといいます。
学さん:
「それぞれの工務店の方と数時間話しましたが、皆さんすごく親切で、いきなり来た訪問者にもしっかりと教えてくれてすごいなと。きっと『新住協』の皆さん、家づくりが好きなんでしょうね」
そうした勉強を重ねつつ、有貴さんが希望するハウスメーカーも毎週末訪問。工務店も含め、半年間で20〜30社を回ったといいます。そのうえで学さんは「新住協」での家づくりをあきらめず、無垢材を使いたいという理想もあったことから、住宅会社探しを隣県まで広げていきました。そして、長野県の建築士を紹介するウェブサイトから見つけたのが、Rebornだったのです。
学さん:
「理想の家づくりを考えていくとだんだん自然派の家に寄っていきましたが、Rebornは坂田木材さんとも一緒にやっているというので、無垢材を使ってもそんなに高額にならずにつくってくれるかなという期待もありました」
連絡を取ると、一度は塩原さんから「遠方だから」という理由で断られたそうですが、その後、再度連絡を受けて会うことになったといいます。どうやらRebornの社内で検討した結果、遠方でも対応しようとの方向になったそう。塩原さんとしても、学さんの熱意に惹かれたところがあったのかもしれません。
こうして塩原さんと初対面した学さん。ハウスメーカーの営業スタッフがスーツなのに対し、待ち合わせに登場した塩原さんは作業服で「プロっぽい人だな」という第一印象を抱いたと振り返ります。とはいえ「その時は自分で勉強していたので、ちょっと図に乗っていたところもあった」のだとか。
学さん:
「塩原さんはどのくらいのもんだ、試してやろう、くらいな気持ちで話を聞きにいって、いつもどおり質問攻めにしたら、ちゃんと答えが返ってきたから、これはすごいなと。高気密・高断熱のつくり方や、なぜその部材を使っているか、換気は一種のほうがよいのではないか。それまでは、はぐらかされることが多く、全部に誠実に答えてくれる人はいなかったんですよね」
一方の塩原さんは、当時の学さんを「とても勉強熱心で全ての質問は玄人同等。私が業界に入って3年後くらいの知識がありました」と回想します。また、有貴さんも「主人は周りの人にも驚かれるくらい勉強していて、それに応えられるのが塩原さんでした」と話すことからも、学さんの勤勉ぶりが伺えます。
なお、その頃、結婚したばかりだった有貴さんは生活に慣れること自体が大変だったうえに親族の土地が使えなくなったモヤモヤがあり、家づくりに対してすっかり精神的に疲れてしまっていたのだとか。
有貴さん:
「一生のことだし、お金もそれなりにかかるのでちゃんとやらなきゃいけないこともわかりましたが、疲れてしまって、主人がひとりでハウスメーカーを回ってくれていました」
学さんによると「妻には最後までハウスメーカーがいいと抵抗されました(笑)」とのことですが、そうしたなかで有貴さん自身も実際に住みやすい家はどんなものかと考えたといいます。
有貴さん:
「夏涼しく冬暖かい家づくりをきちんとやってくれるところを探していましたが、ハウスメーカーでは自分たちが希望する無垢材を使うと値段ばかりが上がってしまいましたし、山梨県内にはあまり熱心に断熱に力を入れている業者がいなかったなかで、主人が信念をもって探してくれたのが塩原さんでした。塩原さんにお願いするのがいいなと考え直しました」
くわえて、特に地震は心配しており、耐震等級1(極めてまれに発生する大規模な地震で損傷はするが倒壊はしないギリギリの耐震性能)でよしとする業者が多かったのに対し、塩原さんは最初から耐震等級3(等級1の1.5倍の地震力に耐えられる強度)をめざしていると話しているところにも信頼が置けたのだそう。
学さん:
「やはり僕も要望が多かったので、仕様が決まっている会社では全部を受け止めてくれるのが難しかったと思います。どこかで『それは妥協していいんじゃないですか』という話にもっていかれそうだったのに対し、塩原さんは柔軟に対応してくれました」
こうしてご夫妻はRebornでの家づくりを決めたのです。
長野県でのRebornの完成見学会にも数回足を運んだご夫妻。「もともと旅行が好きで、ちょっと遠出ができて楽しかった」と話します
ファーストプランから納得。階段はあえてのモジュール崩れに
それにしても、遠方の業者に頼む不安はなかったのでしょうか。しかも、ご夫妻が塩原さんに初めてコンタクトを取ったのは2016年のこと。塩原さんによると、当時のRebornはリフォームがメインで、新築自体はそれほど手がけていなかったそうです。
学さん:
「そんなに新築をつくっていなかったなんて知りませんでしたし、頼んだらやってくれると勝手に信じていました(笑)。でも、結局はつくってくれる人次第ですし、こちらの要望に対してできないといわれるばかりでは最終的に嫌になっちゃいますから」
有貴さん:
「むしろ山梨県には私たちの理想の家をつくってくれる業者はいなかったので、塩原さんに頼らざるを得ませんでしたし、塩原さんが熱心だったので不安はありませんでした。やはり最初の主人の質問攻めにしっかりと応えてくれたのがよかったですね。甲府まで来ていただいたので本当にありがたかったです」
こうして、ご夫妻から要望をヒアリングした塩原さんはファーストプランを作成。とはいえ、間取りにも学さんは相当なこだわりがあり、自分で図面も描いていたそう。
有貴さん:
「塩原さんが主人の描く間取りをうまく具現化してくれました」
学さん:
「子供部屋、6帖のサンルーム、妻の希望のファミリークローゼット、僕の書斎など、いろいろとこちらの要望のとおり叶えてくれて、最初のプレゼンから納得できました。最終的に老後に2階に上がらず1階で生活ができるように考えてもらいました」
化粧台奥がファミリークローゼット。当時は今ほどファミリークローゼットが浸透していなかったそう
学さんの希望の書斎は3帖の空間
ちなみに、守矢邸の中心に位置する階段は通常よりも広く設計されていますが、塩原さんいわく「幅が広い階段は有貴さんの祖母の遺言だった」とのこと。その真相を確かめてみると…。
有貴さん:
「いや、祖父母ともに生きています(笑)。でも、私の実家は階段が広いのですが、見学会に行くとどの家も狭いと実家で話した時に、祖母から『階段は広いほうがいいよ』と言われたんです。その話を塩原さんに伝えたら、たぶん遺言になっちゃったんですね(笑)」
学さん:
「面白いから塩原さんに訂正せず、そのままにしておきました(笑)」
大人でも余裕ですれ違えるほど広い約1m幅の階段
ただ、いずれにしろ階段の設計にはかなりの苦労があったようです。というのも、住宅設計は910mmを基本寸法とする場合が多く、Rebornでも910mmモジュールを基準としていますが、階段を広くするために、ここだけ1183mmモジュールにしているのです。それでも全体をうまく納めているのが塩原さんの腕の見せどころ。通常、基本寸法から外れた“間崩れ”は材料のロスが増えることから避けてとおるため、見慣れない数字が並んだ今回の設計図に大工たちはおののいていたのだとか。その甲斐もあって(?)、広い階段に有貴さんは満足のご様子です。
有貴さん:
「階段が広くなったおかげで、図面の直線上にあるトイレもパントリーも広くなり、特にパントリーは便利ですね。あとは子どもが階段から落ちないといいなと思っています(笑)」
DIYは面白い。なんと外構まで!
ところで、多くの施主がネックとしているRebornおなじみのDIYですが、なんと守矢さんご夫妻は「面白い」と感じたそうです。
学さん:
「もともと壁も漆喰にしたかったんですが、コストも手間もかかるため、山梨県内の住宅会社に話すと『意味がない』とか『壁紙でいいんじゃない』と言われたり、無尽蔵にお金があるわけではないのでコストダウンのために『自分で塗りたい』と話すと、そんなことはさせられないと反対されていました。その点、塩原さんはむしろ『自分で塗ってみろ』と(笑)。なのでDIYは都合がよかったですし、DIYで家づくりに参加できるのも面白いなと思いました」
有貴さん:
「私は早い段階で塩原さんに『DIYにすれば金額も落ちる』と聞いて『なるほど、やろう』と思いましたね」
そこで塩原さんから指導を受けて塗装をしていくうちに、徐々に上達していったのだとか。
学さん:
「家の中で職人さんが工事をしている時にこちらは庭でこれから使う板の色付けをしたり。面白かったですね」
なお、当初はおふたりで施工する予定でしたが、第一子の出産にあたり、有貴さんは途中までの参加となり、終盤は学さんひとりで手がけたそう。心が折れることはなかったのでしょうか。
学さん:
「期限までに間に合わせようと仕事終わりにずっとひとりでやっていましたが、途中から無心になって『きょうはここまでやる』と日々の目標を決めてやっていたので、終わったら達成感にあふれました」
有貴さんも臨月までDIYに取り組み、お腹が大きくて大変だったそうですが、動いていたおかげか(?)無事安産だったそうです。2018年2月に出産し、3月に家が完成、4月に引っ越しと、イベント事が一気に押し寄せた3カ月でした。
そして、守矢邸のDIYの極みが外構です。なんと本格的な外構ウォールまで学さんご自身で仕上げています。
学さん:
「最初は外構のDIYは考えていなかったんですが、見積もりを見ると『うっ』とひるむ金額になるじゃないですか。それに、DIYは楽しそうでもあるし、内装の漆喰を塗ったことで自信もついて、その成功体験に引きずられて自分でやってみるかと(笑)。いろいろな業者に聞いて回って外構プランを立て、最終的にDIYに挑戦しました」
「DIYはつらくて二度とやりたくない」という施主が多いなか、内装で十分という思いはなかったのでしょうか。
学さん:
「勉強したことを自分で試してみることが好きだったので、模索しながらうまくできたらうれしいという思いのほうが大きかったですね」
もともと塩原さんが驚くほど勉強熱心だった学さんですが、「外構はすごく勉強してから取り組みました」とご自身がいうほどなので、よほど勉強したのでしょう。
学さん:
「無理なものは無理とあきらめ、カーポートと、土地の高低差を解消する土留めの工事と、生コンの打設は業者にやってもらいましたが、あとなんとかなるという確信がなぜかあって(笑)。気合いを入れてやりました」
毎週末を外構ウォールのDIYに費やし、材料は中古のものを購入したり、ホームセンターで買い付けたり、小売をしてくれる建材屋を見つけて手に入れたそう。ブロック塀を積み、鉄骨で補強をして基礎を作り、左官仕上げにしています。
学さん:
「ブロック塀の基礎を作るのが激務でした。“なんとか財団”とかの説明書を見ながら作業をして、コンクリートも自分で調合してスコップでヌリヌリして。腰が痛くて本当に大変でした」
ちなみに左官仕上げの素材は建材屋がオリジナルで販売しているものだそうで、二度塗りをしているのだとか。タイルも自分で購入して貼っています。玄人はだしの腕前には塩原さんも「DIYをやったことで何か違うものが見えてきたのではないか」と評していましたが、実際のところはどうだったのでしょう。
学さん:
「一瞬、建築士めざすよね(笑)。だいたい他人がやっていることはできると思いました。ただ、ほかのお施主さんには全くおすすめはしないです(笑)」
というのも、専用の機械もないため、砂利混じりの大量の土を手でふるったりと全て手作業で、本当に苦労したのだとか。
学さん:
「始めたら途中でやめるわけにはいかないので、やりきるしかありません。トータル1年ほどかかりましたが、やはり途中の半年間ほどは夏の暑さにやられ、道具を放置したまま動きが止まってしまいました。もう一回気合いを入れ直してやりましたが、お金があるのならプロにやってもらったほうがいいですね(笑)」
実感がこもった言葉に思わず納得してしまいますが、それにしても見事な出来栄えに感服します。
外構ウォールを設置後、隣家との境の木製フェンスはRebornが施工
光熱費も削減したQ1.0住宅で環境にやさしい家に
理想の住まいを追求するためにDIYの労力は惜しまないおふたりの話を聞いて感じるのが、堅実性です。それはエネルギーに関しても同様。お得なエネルギーは何かを考え、給湯とパネルヒーターの温水暖房をまかなうドイツ製のLATENTO太陽熱集熱器を採用しています。
LATENTOの集熱パネルを3台設置
学さん:
「太陽熱で給湯を補充する機械にはもともと興味があり、LATENTOは塩原さんから紹介されて知りました。塩原さんがつけたそうにしていたのもありましたし(笑)、10年ほどで元が取れそうだとわかり、設置してもいいなと思いました」
「屋根の上に立てるものは見た目が気になる」という有貴さんの希望に対し、LATENTOの集熱器はバルコニーの手すりの斜め壁に設置できるのもよかったそう。そして実際の使い心地は「大正解」なのだとか。
学さん:
「気温が高くなってくると風呂などの給湯には灯油をほぼ使わず、冬のパネルヒーターでの全館暖房もほとんど光熱費がかかりません。これはよかったですね」
そこで、実際に年間の灯油消費量を尋ねたところ、3年間の累積消費量が給湯で約127L、暖房で約1268Lとのこと。実は塩原さんとの約束で、ご夫妻は3年間の灯油消費量を毎月計測していたそうで、以下が一覧表をグラフ化したものです。
赤い棒グラフが暖房の灯油使用料。毎年11〜4月の冬場のみ使用していることがわかる
グラフを見ると、夏はほぼ灯油を使用していないことが一目瞭然です。冬も暖房にしか使われていません。
なお、塩原さんが3年点検で守矢邸を訪問した際は常に室温が23℃前後で保たれていたことから、今回のデータを「新住協」の計算プログラム・QPEXで全室室温22℃設定にして計算したところ、データとシミュレーション上の数値がぴったりだったそう。つまり、QPEXでかなり正確なエネルギー消費量が導き出せることも、塩原さんにとっては大きな収穫となったようです。
こちらがQPEXを用いた塩原さんの計算書
ちなみに守矢邸は山梨県内でLATENTOの導入第1号のようで、施工中、ドイツからの視察があったとか。そんなLATENTOですが、貯湯タンク内の温度が80℃以上になると機械類に負荷がかかって破損する恐れがあるため、真夏は天候次第で集熱を抑えるために遮熱シートなどをかける必要があります。その手間も気になるところです。
有貴さん:
「若干の手間はありますが、本当に一時期だけで、シートをかけたらかけっ放しにしてしまうので、モニターを確認してそろそろ80℃だとわかればかけて、天気が悪い日が続いたら外したり。毎日なら大変ですが、時々しかやらないので苦になることはないですね」
また、2階の屋根には約7kwのソーラーパネルを後のせしています。これは「のせられるのであれば」と、ご夫妻が工事終盤に別業者を手配するかたちで設置したそう。とはいえ、エネルギーはオール電化ではなく、給湯は灯油ボイラーも使用しています。
屋根の上にはソーラーパネル
給湯は灯油ボイラーで
学さん:
「一番得なエネルギーをいろいろ考えましたが、最終的によくわからなくなったので塩原さんの意見を聞いて、灯油や電気を使うことにしました。今は余剰売電をしていますが、将来的には蓄電池も使い、電力会社を使わずに全て自活できる家になったらすごいなという思いがあります」
有貴さん:
「やはり生活していくうえではランニングコストの光熱費がかからないほうがいいですし、コストパフォーマンスを求めていったら、結果的に地球環境にもやさしい家になったように感じます」
塩原さんとしては「社会に貢献できる家」として、いずれ何らかのコンテスト応募も考えているのだとか。SDGsやサスティナブルが注目される昨今、人にも社会にも環境にもやさしいRebornの家づくりの動きも要チェックです。
「LATENTOやソーラーパネルを通じて子どもにエネルギーについて教えられるのもいい」と学さん
2020年には第二子の長男も誕生しました
快適で心地よい暮らし。無垢材もお気に入り
さて、暮らし始めて3年。第二子も生まれた現在、住み心地はいかがでしょうか。
学さん:
「夏は想像していたよりもひんやりしていて、エアコン2台だけで全館が涼しく、冬は家に帰ると暖かさがよくわかりますね」
有貴さん:
「夏は洞窟の中にいるようです。冬も一カ所が寒くなることがなく、私の母がよく遊びに来るんですが、快適だと言っています。じんわり暖かいので体の芯から暖まるのか、あまり寒さを感じなくなって暖かくいられると話しています」
というのも、守矢邸の特徴は断熱にもあります。床に高性能グラスウールの付加断熱を採用しているのです。いまやRebornでは当たり前になったこの仕様は、守矢邸がきっかけで導入されました。
窓は甲府市内ではほとんど採用のない樹脂サッシでペアガラスに
夜はスタイロフォーム断熱材が入った断熱引き戸を閉められる構造
また、こだわりの無垢材もお気に入りだとご夫妻。1階の床材はオーク(ナラ)で、有貴さんのご希望でした。
有貴さん:
「木目がきれいで、柄や色、質感も気に入っています。硬い素材なので傷もつきづらくてよかったですね。冬も暖かいです」
学さん:
「他社の見学会で見るオーク材は一枚一枚がすごく小さくて節が多く、一度見に行った家は黒い節が全体的にあって気になりましたが、塩原さんが用意してくれたものは一枚一枚が長くてきれいでした。素材としても本当にあまりへこまず強くていいですね」
2階の床は予算を踏まえてヒノキを採用しました。
有貴さん:
「ヒノキは柔らかくて踏み心地も気持ちいいですが、カバンを引きずっただけで跡がついてしまったり、床がミシミシと鳴ったりするので、普段いる1階の床に使わなくてよかったかな。ただ、ヒノキの特性がどうしても嫌なわけではないですし、それが自然の家ということですよね」
リビングのテレビ台背面のマホガニーのアクセント張りも有貴さんの希望によるお気に入りです。
有貴さん:
「遊びにきた友達が褒めてくれますし、自分でもきれいな仕上がりでよかったと思っています。ハウスメーカーですとプリントの壁紙になりがちですが、やはり本物の木材はいいですね」
ランダム配列のマホガニーのアクセント
壁掛け式テレビのため、壁内に下地が入っている
玄関ドアもマホガニーを使ったRebornオリジナル。既製品とは違って温かみがあります。玄関収納も造作で、全体的に木の温もりがあふれる空間になっています。
多用途の収納が可能な玄関収納
マホガニーを縦張りした玄関ドア
また、2階の子供部屋の大きな窓の外には、塩原さんのすすめにより、日射を遮るためのドイツ製の自動開閉式ブラインドが設置されています。この使い心地もよいそう。
学さん:
「夏にブラインドを締め切っていると部屋が暑くならないし、自動開閉なのも便利です。あれが手動だったらブラインドは閉めないかも(笑)」
外付けブラインドは高架橋近くに位置する守矢邸の目隠しとしても機能
外付けブラインドとはなかなか珍しいですが、どうやら環境先進国のドイツでは一般的だそうで、日射エネルギーの透過率を約80%窓の外で遮断してくれるのだとか。いわゆる、日本古来の「よしず」の進化版? 採光はそのままに熱だけを効率的にカットしてくれ、堅実派のご夫妻にもぴったりです。
使いやすい良好な家事動線も魅力
さて、共働きのご夫妻にとって、家事動線のよい間取りも有貴さんのご希望だったそうですが、使い勝手はいかがでしょう。
有貴さん:
「いいですね。特に洗濯物は毎回2階に上って干すのは大変なのでできるだけ楽なほうがいいとお願いしましたが、1階で済ませられるのがすごく便利です」
塩原さんから室内干しを提案されてサンルームをつくりましたが、屋外に干したい思いもあったことから、庭にも物干し台を設置してもらったそう。
有貴さん:
「サンルームからすぐにウッドデッキや庭に出られるのもいいですね。2階の物干しはシーツなどの大きいものを洗って干す場所がないときに使っているくらい。楽チンです」
LATENTOパネル下の空間がサンルーム。その前に物干し台を設置
サンルームからウッドデッキへ
サンルームは子どもの遊び場としても使っており、今後は子どもたちの勉強空間としても活用していく予定だそう。
有貴さん:
「サンルームで洗濯を干したり、キッチンでごはんを作りながら子どもたちを見ていられて、すごく便利です」
写真奥がサンルームでキッチンから移動しやすい
キッチンの食器棚、家電棚もRebornオリジナル造作品
対面式キッチンでリビングが見渡せる設計
Reborn初、省令準耐火構造で火災保険が約半額に
さらに守矢邸は、ご夫妻の希望により、塩原さんが初めて省令準耐火構造に挑戦した住宅でもあります。対象となるのは断熱材にグラスウールやロックウールを用いた家で、梁や柱の構造材はすべて燃えにくい石膏ボードで覆われています。多少コストは上がりますが、火災保険が約半額になるのが大きなメリットです。
学さん:
「工賃は上がっても、火災保険を考えるとかなりお得になるのに、なぜかやりたがらない住宅会社が多くて不思議に思っていました」
有貴さん:
「本来ならもっと天井の木材を現しにするのが塩原さんの家づくりだったかもしれませんが、私たちが省令準耐火構造のために天井を隠したいといったらちゃんと応えてくれました。それもありがたかったですね」
壁や天井が燃えにくい仕様になった省令準耐火構造
入口やウッドデッキの柱も不燃材料を使用
大切なのは、どの性能に重点を置いて家づくりをするか
それでは、これから家をつくりたい人に向けてのアドバイスを聞きました。
学さん:
「間取りや外観は確かに大事ですが、40年と住む家なので、どういう環境が人間にとって快適なのかを考えたほうがいいと思います。断熱など、家の性能のどこに重点を置くかを考えてつくらないと後悔します」
そこで、Rebornで家づくりをする方に対してのアドバイスを尋ねると…。
学さん:
「アドバイスというよりも、うちはRebornでつくってよかったと思っています。下手にいろいろと手を広げているところよりも親身になってくれると思いますし、自分も家づくりに参加したい人はRebornでつくったら満足するでしょう」
有貴さん:
「たまに現場を見に行くよりもDIYで作業しながら大工さんと顔を合わせたほうが親近感が湧いて安心感が高まりますし、一緒に家づくりをしたという実感もできていいですね」
タイミングよく気密測定にも立ち会えたというご夫妻。きっと実際の測定値を見てさらに安心感を覚えたことでしょう。
有貴さん:
「このランニングコストで快適な暮らしができて、本当に感謝しています。DIYも家に愛着が湧くので、ぜひ楽しく取り組んで、皆さんRebornで家を建てればいいですね(笑)」
学さん:
「DIYは強制ではないのでやりたくなかったらやらなくていいですし、塩原さんは要望をどんどん取り入れてくれます。我が家も将来は最終的にリフォームまでしてもらえたら。Rebornはもっと注目されていいと思っています。多くの人におすすめしたい会社です」
今のところ、特に家への不満はないと話すご夫妻。それでも、住んでいて気になることを聞いたところ、うーん、としばらく考えたあと「強いていえば、玄関の軒が短くて玄関ドアの劣化が気になることと、家の中に日射が入りづらいので植物が枯れやすいこと、造作のトイレットペーパーホルダーが落ちやすいこと。ひねり出してそのくらいです(笑)」と話してくれました。その正直な言葉と笑顔が家づくりの満足度の高さを現しているようでした。
記者感想
今回は初の試みでリモート取材となりました。塩原さんから「仲良し夫婦」と聞いていたとおり、モニター越しからも夫婦仲のよさが伺えたご夫妻。時折冗談や笑い話が飛び交う和やかな取材でしたが、そんななかでも強く感じたのが、ご夫妻の家づくりに対する明確な考えです。イニシャルコストもランニングコストも無理はせず可能な範囲で抑える。そのための労力を惜しまない姿勢はなかなか真似ができるものではありませんが、だからこそ納得の家づくりが叶ったのでしょう。
なお、守矢さん夫妻が家づくりを考え始めた2016年は、熊本地震や九州での記録的な大雨、台風などさまざまな災害がありました。近年は毎年、当然のように豪雨に見舞われ、日本は改めて自然災害の多い国だと気づかされますが、そうした危機感からも、ご夫妻は耐震や省令準耐火構造にもこだわったのではないでしょうか。高気密・高断熱の住まいは停電時に屋内で暑さ・寒さをしのげることも踏まえると、家づくりで災害を完全に防ぐことはできなくても、被害を軽減することは可能だと感じることもできました。
そのうえで、エネルギーにまで配慮しているのも守矢邸の特徴です。「自分たちが暮らしやすい家を考えたら、自然と環境にもやさしい家になった」とのことで、経済的で快適な暮らしは結果的に未来の環境保全にもつながるのだとわかります。それに、持続可能な家づくりは、今後、必ず不可欠になる要素。二酸化炭素の排出を抑え、省エネ・創エネの住まいであることに加え、廃材を出さないためには、次世代も同じ家に住み継ぎたいと思えるような愛される住まいづくりも大切です。その点、DIYで愛着を育むことも大きなサスティナブルへの貢献にもなるのではないかと感じました。
一方で、住宅会社選びは家の仕様やスペックの比較も大切ですが、会社や担当者を信頼できることも大きなポイントです。センスや相性のよさもマッチすれば、安心して楽しく家づくりが進められるのだと、今回の取材でも実感することができました。
ライター:合同会社ch. 島田浩美
写真:FRAME 金井真一