規格住宅をカスタマイズ。お気に入りに囲まれた住まい
Rebornの規格プランでの家づくりを決めた長野市の南澤さんご家族。35坪プランをアレンジし、性能面も重視しつつ、自分たち好みのスタイルに徹底的にこだわったオリジナリティあふれる住まいを実現しました。塩原さんいわく「見どころ満載でストーリーが詰まったお宅」なのだとか。そんな家づくりの背景を探るべく、南澤邸を訪ねました。
デザイン、機能、コストのバランスを重視
長野駅東側の人気エリアに位置する南澤邸。地図を頼りに閑静な住宅街を進むと、独特の風合いの西洋漆喰の外壁が目に入り、すぐに「この家だ」とわかりました。Rebornの規格プランながら、原型である2階の木製のベランダ(バルコニー)を撤去している分、見える壁面が広がり、西洋漆喰の白さが一層、青空に映えます。
「この家の外観は漆喰によって生まれる陰影や、付加断熱の分、窓が引っ込んでいるところなど、全体的になんだか魅力的な雰囲気があって、夜も漆喰の白さが周囲の明かりに反射してわかりやすいんです。建築中によく見に来ていたというご近所さんも『素敵ね』といってくれていましたし、私もお気に入りです」
こう話すのは、主に家づくりの素材選びやデザイン面を担当した奥様。そう、この家は「好きなものに囲まれた快適な暮らしを楽しみたい」という南澤さんの奥様のこだわりがギューっと詰まったお宅なのです。ちなみにご主人の担当は「徹底したコスト管理とDIY」だったとか。見事に分業制が成立していた南澤邸で、今回は奥様の話を中心にお届けします。
インテリアコーディネーターのようなセンスで素敵な住まいを実現させた奥様
庭の木製駐輪場はご主人のDIY。外構屋に「筋交いを入れたほうがいい」とアドバイスを受けながら作ったそう
現在、8歳の長女と5歳の長男を子育て中のおふたりが結婚したのは、10年ほど前。もともと、県外の暖かい土地で生まれ育ったという奥様は、ご主人の仕事の関係で長野への移住が決まった際、ご家族から冬の寒さを心配されたのだとか。実際、最初に暮らしていた賃貸マンションでは、人生で初めて霜焼けができたといいます。
奥様:
「霜焼けって童謡の世界の出来事じゃないんだと衝撃で(笑)。周囲と比べて性能のよい賃貸マンションでしたが、長野の冬は寒いのが当たり前で、モコモコの靴下を履くのが普通なんだと思いました」
ただ、マンション暮らしは手軽で景色もよかったものの、ネックは狭いこと。特に子どもが生まれたあとは、限られたスペースでご夫妻のお互いの生活が干渉し合うことが気になったそうです。そこで、長女の小学校入学を目前に、家づくりを考えるようになりました。
奥様:
「夫の仕事は県内転勤の可能性があり、ベースがないと子どもたちが点々と暮らしていくことになってしまうので、生活基盤を安定させるためには子どもの小学校を定め、長く根ざしていく場所を決めたい思いがありました。マンションは長い目で見たときに管理上にメリットがなかったので、一軒家一択でした」
そこで、土地探しと住宅会社探しを同時にスタート。土地はもともと将来を見据え、小学校の評判や、通学・通勤のしやすさ、駅へのアクセス、交通の便、買い物事情などを調べており、賃貸のときから希望のエリアに住んでいたため、賃貸マンション周辺で検索しました。ところが、人気エリアゆえに、なかなか自分たちが望む広さの土地に出合えなかったといいます。
一方で、住宅会社は断熱と耐震性にこだわって探し、住宅展示場でいまいちしっくりと来なかったなかで出会ったのがRebornです。きっかけは、新聞折込の住宅情報誌。「断熱」や「耐震等級3」という言葉に惹かれ、案内が出ていたリフォーム物件の見学会に行ってみたところ、ビフォー/アフターの変化に驚いたそう。
奥様:
「変わり具合がすごくて、こんなに快適な家を造れる住宅会社ならいいなと思いました。それに、新建材のツンとした匂いがないとか、明るい木の温もりとか、五感で快適さを感じることができたうえ、塩原さんの気さくさ、売り込まなさも新鮮で興味をもちました」
家の暖かさを漠然と表現するのではなく、明確な数値と指標で客観的に示すことができるのも、この見学会で知ったそう。帰り際には塩原さんの自宅も見学し、より家づくりへのイメージが膨らみました。
こうしてRebornのことも知りつつ、土地探しを続行。しかし、思うように進まず、好条件の土地が出てもタッチの差で購入されてしまったりと、足掛け2年ほど経ったある日、とうとう希望エリアに手頃な大きさの土地を見つけたのです。ところが、他社の建築条件付きの土地。迷っている時間はありませんでした。
奥様:
「そこに至るまでRebornの見学会にいくつも参加していましたし、塩原さんのブログで得た知識もあったので、それをもとに他の住宅会社でも家づくりができるのはないかと考え、一度はRebornでの家づくりを諦めて、その土地に飛びつきました」
こうして、別会社との打ち合わせを進めたご夫妻。ところが、Rebornでは標準装備の断熱性、耐震性が簡単に実現できるものではないことがわかったといいます。
ご主人:
「オプションで断熱性能や耐震性能を追加しても、Rebornほどの水準になるかわからないなかで、設計に建築家を入れている分、費用はかかるものの見た目はいい家ができる、という感じでした」
奥様:
「土地の購入も考えると、家づくりだけに費用をかけるわけにはいきません。見合ったコストで性能のよい家を建てたい思いがどうしてもあったのですが、どんなに斬新で素敵な間取りでも、コスト相応の断熱性と耐震性は当たり前にはできないんだなと。その点、塩原さんには『暖かくなく、耐震等級が低い家は建てない』という強いポリシーが感じられました」
実はその住宅会社とやりとりをしていた間も、ご夫妻は塩原さんに見積書や図面などを相談していたのだとか。
奥様:
「本来であれば、まだお客さんにもなっていない私たちが同業他社のものを相談することはよくないのかもしれませんが、今思えば、Rebornは私たちの家づくりの拠り所になっていたと思います」
そして、「費用対効果で考えると、Reborn以上に納得できる住宅会社はない」と判断し、夫婦でとことん話し合って、最終的に条件付き土地は見送ったといいます。
奥様:
「正直、その会社とも打ち合わせを重ねて築いた信頼関係もありましたし、次第に金額も麻痺してきて『そうはいっても実家よりは暖かいし、ここまで来たらその会社でいくしかない』と、自分を納得させようとしていました。それでもやはり、なんだか100%前向きな気持ちでGOできない心残りがあり、謝罪に行きました」
一度、建築条件付きの土地に決めてからここまでで半年ほど。振り出しに戻った奥様は気持ちが落ち込み、やさぐれ、もう土地探しは諦め半分の思いだったそう。それでも、こまめに不動産会社の新着情報をホームページでチェックし、ようやく巡り合ったのが現在の土地でした。しかし、更地ではなく中古物件付きの土地。そこで、見学会でRebornのリノベーションについても知っていたことから、中古物件のリノベーションを依頼しました。
中古物件のリノベーションか、新築か
こうして、塩原さんがインスペクションを実施。しかし、築年数が40年ほどで思っていたほど状態がよくなく、将来子どもたちの代まで受け継いでいくためにはかなりの修繕コストがかかると判明し、「この金額ならRebornでの新築がよいのではないか」との結論に至りました。そして、注文住宅への憧れはあったもの、コストとの兼ね合いを考えるなかで塩原さんに勧められたのが規格プランでした。
奥様:
「定型で間取りはほぼ決まっているものの、使っている素材の変更や窓の追加ができたりと自由度が高く、なおかつ耐震等級3もクリアできる。さらにオプションの費用も明確でわかりやすかったので、家を建てるための具体的な試算ができたことにも惹かれました」
その間、Rebornの規格プランで施工したOBの方々も訪ね、快適な暮らしぶりを実感したほか、塩原さんのブログで見た施工事例も後押しになったといいます。
奥様:
「シンプルな総2階の住宅で雑誌映えするような間取りではありませんが、十分広くて快適なことがわかりましたし、私たちのように土地から購入する以上、断熱と耐震、両方の性能がかなうのはRebornの規格プランだと考え、そこからは一気に計画が進みました」
当初はコスト面も踏まえて30坪のプランも考えたそうですが、最終的に35坪に決めたのは、家の中に家族それぞれの居場所がほしいという思いと、リビングに子どもたちの学習用スペースを併設したい希望もあったから。また、将来的にご夫妻の老後を考えたとき、できるだけ1階で生活を間に合わせたい思いもあったといいます。こうした思いを踏まえ、35坪プランの原型の6帖の和室空間は、フローリングの子ども用学習スペースに変更されました。
壁にカウンターを造り付け、窓を設けて明るい空間に
おもちゃなどでも遊べるフリースペース
この学習スペース、現在は子どもたちが宿題をしたり遊んだり、ご夫妻がパソコンを使う空間として活用していますが、将来子どもたちが巣立った際にはご夫妻の寝室にすることも考えているそう。また、畳のコストが浮いた分は、ほかの設備や仕様に費用をかけることができたといいます。
木材にこだわった玄関からLDKへ
それでは、こだわりのポイントを隅々までご紹介していただきました。
木製の玄関ドアは材木を乱張りしたRebornらしさを感じるもの。玄関ポーチの大判タイルはドアの中まで続き、玄関タイルにもなっています。上品な色ムラ感のあるタイルなので、表情豊かな印象に。玄関から上を見上げると軒天の板張りが見え、木目が漆喰の白さを引き締めています。
ドアから明るい玄関ホールへ。造作の玄関収納は玄関ドアとお揃いのローズマホガニー材で作られており、統一感のある仕上がりに。
奥様:
「玄関ホールはコンパクトな造りながら、大きな採光窓があるので明るいですし、この窓から夜は月がきれいに見え、朝日も気持ちがよくて、さりげなくお気に入りの場所です。玄関収納も温もりがあって気に入っています」
玄関ホールから続く18帖のLDKのフローリングはオーク(ナラ)材に。
奥様:
「マンション暮らしのときは、床がペタペタする素材で冷たかったので、いちばん肌に触れる床材にはこだわりました。ナラ材はおしゃれですし、冬も素足で歩ける気持ちよさがあります」
一方、2階のフローリングは安曇野産アカマツにしました。予算との兼ね合いもあって悩んだそうですが、塩原さんからのアドバイスもあって、家族が集う1階はちょっと奮発したオーク材に、ほぼ寝る場所である2階は良材ながらややコストを抑えたアカマツにしたそう。
奥様:
「広葉樹のナラに対し、針葉樹のアカマツは柔らかい分、傷が付きやすい心配もありましたが、2階で子どもたちがおもちゃで遊ぶこともありませんし、なにより素足で歩くと広葉樹より暖かいので、寝る前にリラックスできてとてもよかったと思っています。日中はよく子どもたちが2階の陽だまりで遊んでいます」
ちなみに、こうした木材の知識は、Rebornや坂田木材とのやりとりのなかで自然と培われていったのだとか。
奥様:
「Rebornで家を建てる人は、最初は素人でも、きっと私たちのように進めていくうちに多くの知識を得て、ちょっとした営業マンになれるんじゃないかと思えるくらいになります(笑)。それに、木材はわかりやすく提案してもらえ、選びやすかったですね」
細部までこだわったLDK
LDKの天井は構造梁をあらわしにして、天井面まで漆喰が塗られています。DIYで塗装を手がけたのは、もちろんご主人。塗装前には一つひとつの梁にマスキングテープなどでの養生が必要で、とにかく苦労したのだとか。
奥様:
「夫は途中、本当に心が折れそうになっていました(笑)。それに、計画段階からこの仕様は大変なので板張りにする人が多いと塩原さんから聞いていましたが、私は漆喰の白い明るさの面積を増やしかったですし、梁があらわしになった味わい深さも表現したかったので、夫には頑張ってもらいました」
もちろん、壁面も全て漆喰が塗られていますし、なんと、2階の天井面も同様の仕様に。床も全てオイルステンが塗られており、ご主人の相当な努力は想像に難くありません。
ご主人:
「DIYのために3カ月ほど土日は張り付き、平日も仕事後22時頃まで塗りました。労力的にはものすごいことです」
ただ、クロスを貼った壁とは異なり、汚れたときは自分たちで手直しができますし、DIYによって家への思い入れも深まったそう。
ご主人:
「現場の職人さんたちから『ほかのところより上手だ、俺にはできない』と褒めてもらえてうれしかったのですが、もう二度とやりたくないですね(笑)」
とはいえ、仕上がりには大満足。奥様も「光が差したときの漆喰の陰影がすごく素敵で、影によって壁や天井に味わいや表情が生まれ、なんともいえない充足感があります」と話します。
さらに、LDKの天井で特筆すべきが、化粧梁に仕込んだ間接照明。塩原さんが長年温めていた「光る梁」のアイデアだそうで、柔らかい光を放ちつつ、空間が洗練された雰囲気に変わります。
奥様:
「塩原さんが第一号の試作としてサービスで設計してくれました。この規格プランも今まで塩原さんの数々の試作のおかげで完成していると思うので、得た分のお返しだと思ってお任せしましたが、結果的にすごく便利で、リビングでほかの照明を点けたことがないくらい、部屋全体を明るくしてくれます。うれしい誤算でした」
リビング南面の大開口の掃き出し窓は、この家の中で唯一のトリプルガラスに。共働きのご夫妻は日中不在にすること多く、昼間でもカーテンを閉めた状態が多いため、日光を採り入れて部屋を暖めるシチュエーションが少ない分、断熱性能を重視しました。
奥様:
「開放感がほしかったので、大きな窓は重要でしたし、全体的に窓の数も多めにし、位置などにもこだわりました。一般的な住宅で、Q1.0住宅の断熱性能を保ちつつ、これだけ多くの窓を設けることは難しいと思います。暖かさと明るさの両方を実現できたのは、Rebornならではですね」
さらに、リビングの一角には90cm四方程度の大きさの2階への吹き抜けが。これにより、さらなる開放感や明るさが得られ、子どもたちが2階にいるときも1階で気配を感じられ、つながりも得られるといいます。また、空調設備を、Rebornで通常採用しているパネルヒーターではなくエアコンにしているのも南澤邸の特徴で、この吹き抜けが空気を循環させ、エアコンの働きを助ける役割も果たしているそう。
互いの姿が見え、声が聞こえる心地よい距離感を生み出す吹き抜け
吹き抜けを覗くと1階のリビングが見える
しかも、1階と2階、それぞれに小さな容量の壁掛けルームエアコンを設置しているだけですが、普段、ご家族は1階で過ごしているため、2階のエアコンは真夏のお盆前後の最も暑い1~2週間の就寝前にしかつけないのとか。
奥様:
「冬は大きな掃き出し窓から日光が入ると上着がいらないほど暑くなりますし、吹き抜けの床を貼らない分の費用がかからず、コスト面でもメリットがありました」
エアコンだけの冷暖房設備はRebornの規格プランで初の試みだったそうですが、長野市では問題なく過ごせることが証明されたようです。
壁付きキッチンで仕様をグレードアップ
さらに、奥様のこだわりが凝縮しているのが、サブウェイ・タイルを取り入れた、海外カフェ風のキッチンです。規格プランのベースは流行の対面式キッチンですが、あえて壁付きにし、壁面をタイル施工にしました。
奥様:
「今までの賃貸マンションが対面式キッチンで、回り込む不便さを感じていましたし、両側から回り込めるアイランド型のキッチンにすると設備は高額なうえ、奥行きを取ってリビング・ダイニング空間が狭くなってしまうのに対し、壁付きのほうが空間を広く利用でき、調理や家事にも集中できると思いました」
しゃれた印象の対面式も迷ったそうですが、SNSや画像集で調べるうちに、外国のキッチンは大きな窓のある壁付きが多く、素敵な印象を受けたことが決め手になったそう。そして、キッチン設備のなかではいちばん手頃なI型タイプにした分、抑えた費用をオプションに回し、最新のガスコンロやレンジフードにグレードアップしました。
また、壁のタイルも、キッチンパネルのほうが掃除がしやすいメリットはありましたが、手入れをしながら楽しむ暮らしとタイルの独特の味わいに惹かれて採用しました。
奥様:
「おしゃれなカフェや素敵な写真を参考にしていくうちに、タイルをお手入れしながらの暮らしに惹かれました。今までの賃貸暮らしでは、よくも悪くも気軽に住んでいましたが、自分の家では手間をかけた生活を楽しみたいと思ったんです」
タイルの目地も白色にしたことで汚れに気づきやすい分、こまめにお手入れができるので、住み始めて1年が経った今も美しさは保ったままです。
奥様:
「数あるタイルカタログから気に入ったものを探したので、すごく気に入っているキッチンです。施工が大変でタイル屋さん泣かせだったそうですが(笑)」
さらに、タイル壁面に窓を設けたことで、開放感も生まれています。
キッチンとリビングの間には造作のアイランドカウンターを設置。これは壁付きキッチンだと背後からの視線が気になると感じていたところ、塩原さんから提案されたものだそう。
奥様:
「おかげで足元もゴミ箱も隠れ、日用品置き場にも便利で、作業台としても使えます。家族に料理の盛り付けや配膳を手伝ってもらったりと、ここでやりとりができるのですごくおすすめです」
素材やインテリア選びが好きで、多くの画像を見て勉強したという奥様。わからないことも多く苦しさもあったそうですが、Rebornは規制がなく自由に選べて楽しかったと話します。
奥様:
「照明などの備品も全て施主支給でしたが、今はブログやSNSで画像がたくさんアップされている時代なので、私のように自分でやりたいことを調べて提案できるタイプには、Rebornが合っていたと思っています」
なお、防犯や使い勝手も考え、既定プランの原型であるキッチンの勝手口も撤去しています。
規格プランのなかでオリジナリティをどう表現するか
こうしたキッチンや玄関タイルからもわかるように、巧みなタイル使いが南澤邸の意匠の特徴のひとつ。トイレや洗面台にもタイルが多用されています。
奥様:
「規格プランのよいところは、価格が手頃な分、自分たちの好きなものをカスタマイズし、お気に入りのものを取り入れられるところ。タイルを使うだけで、同じ規格プランの家でも大きく異なった雰囲気になります。間取りは定型だからこそ、差別化やオリジナリティを生み出すうえで、私にはタイルは欠かせませんでした」
トイレの床は大判のPタイルを使用。小さな手洗器に無垢材の棚を造り付けています。
ちなみに、2階のトイレはシンプルな造りだったため、壁面は漆喰に色を加え、ライトグレーの仕上げに。照明など小物でも遊びましたが、奥様の最大のこだわりは引き渡し直前に発揮されました。本来の木材の色そのままだった巾木がどうしても気になってしまったといいます。
奥様:
「白いほうが統一感があって明るくなると感じてしまい、塩原さんに白く塗りたいと相談すると、メールから絶句している様子が伝わりました(笑)。すでに壁の漆喰を塗ったあとで養生もできないまま自分で塗ったため、手作り感あふれる塗装になりましたが、すっきりした空間になり、無理をいってまでお願いしてよかったです」
引き渡し数日前に奥様が急遽白く塗装した巾木
子どもたちを寝かしつけた前後の時間を見つけて塗り直したという逸話からも、この家にかける奥様の強いこだわりが感じられます。
2階には家族それぞれの居場所を
2階は家族4人、各自の時間を大切にしようと、衝立で部屋を分けるのではなく壁を設け、4つの独立した個室空間に。ご夫妻の各部屋はベッドが大半を占めるほどの限られたスペースですが、天井を1階と同様、漆喰で塗ったことで明るくなり、構造梁をあらわしにしているため、開放的で圧迫感はありません。
奥様:
「ベッド以外のスペースの幅が50cmしかないので、図面上では狭いことを心配していましたが、実際に使ってみると狭さは全く気にならず、すごく落ち着けます。天井の高さもありますし、梁によって視覚的にも自然を感じて気に入っています」
子どもたちの部屋は4.5帖ずつで、将来はそれぞれに学習机とベッドを置く予定だそう。こちらも図面では狭さを懸念していましたが、実際は十分な広さがあり、コンパクトで使いやすいとか。また、奥様の部屋以外は全て二面採光で、涼風が吹く頃は窓を開けて空気を循環させると、家全体に風が抜けて本当に気持ちがよいそうです。
また、家の中の扉はトイレ以外全て、部屋が広く見える引き戸を採用。レールをなくして上から吊り下げる上吊り式にしたことで、溝にホコリが溜まらないので掃除も楽だとか。段差もなくフラットなので、見た目もスマートでつまずくこともないそうです。
奥様の部屋に併設されているクローゼットはファミリークローゼットとして、家族の着替えだけでなく、雛人形や兜など季節のものも収納しています。
奥様:
「いちばん収納力が高いとアドバイスをいただいたコの字型のクローゼットで、家の中にはタンスなどを置かず、この空間だけで家族4人分の収納ができています。シンプルで物の出し入れもしやすく、すごく楽ですね」
そして、規格プランの原型である2階のベランダは撤去。夫婦共働きのため、1階で洗濯したものはそのまま1階のウッドデッキで干したほうが動線上、便利だと感じ、勇気を出してバルコニーの撤去を申し出たのだとか。
奥様:
「帰宅してすぐにデッキテラスから洗濯物を取り込めるので、とにかく楽ですね。テラスには屋根をかけてもらいましたが、費用的にはベランダ設置とほぼ変わらずにできたので私たちの選択としては正解でした」
本来、ベランダがある場所には木製のバーが設置されており外観の意匠性を高めていますし、窓で布団を干す際に便利なところも気に入っているそうです。
子どもたちにとっての家づくり
こうして暮らし始めて1年。完成までのあまりの長い道のりに、引き渡し直後は実感が湧かず、正直「やっと終わった」という安堵感が強かったと話す奥様ですが、暮らしが落ち着いた今は、好きなものに囲まれた生活や使いやすい設備はもちろん、漆喰と24時間換気のすっきりした心地よさなど、日々の快適さを実感しているそう。では、完成時の子どもたちの反応はいかがだったのでしょう。
ご主人:
「以前の家に比べて広くなった分、隠れ家を作ったり走り回ったりできていますし、階段があるのが相当な変化でうれしそうでしたね」
奥様:
「のびのびと過ごしていますし、以前の家のように『寒い』といわなくなりました。2階の子ども部屋で自分たちだけで寝られるようになって、自立にもよい影響があります」
Rebornの見学会にも子どもたちと一緒に行っていたため、最初から塩原さんと信頼関係を築いていたのもよかったそう。さらに、施工中を振り返って奥様がよかったと感じているのが、職人たちとのやりとりです。
奥様:
「建前で初めて顔合わせをしたときから、職人さんたちは塩原さんと信頼関係ができているのがわかりましたし、建築中はひたむきに作業している姿を見て、この人たちに造ってもらったら間違いないという印象を受けました」
子どもたちに対しても「今日はここを造ったからね」と話しかけてくれたりと、気さくなやりとりもよかったそう。
奥様:
「完成して間もない頃は『みんなが長く安全に住めるおうちを塩原さんが考えてくれて、大工さんや電気屋さんなどたくさんのおじさんたちのおかげでこの家ができているから大事に使おうね』と話していました。人とのつながりを感じられたのも、Rebornで建ててよかったと思うところです」
職人との顔が見えるやりとりは、奥様としても安心が大きかったそう。
奥様:
「オプションの施工でわがままをいったときも『そんなもんですよ』といって気持ちよく対応してくださって安心しました」
塩原さんも忙しく各地の現場を飛び回るなかで、職人との窓口として打ち合わせや細かい相談に柔軟に応じてくれたほか、照明など施主支給の設備に対しても「世の中には粗悪品もあり、海外品はトラブルもある」という安全面でのアドバイスももらえて役立ったとか。
奥様:
「塩原さんへの要望は、日々忙しそうなので、とにかく健康で長生きしてください、ということしかないですね(笑)」
また、長期優良住宅の認定を受けたしたことで、保険料が安くなったことも、今後の長い人生を考えると大きなメリットだったと奥様は話します。
奥様:
「近年は自然災害が顕著になってきていて、勢いやデザイン性だけで家は建てられません。人生100年時代といわれるなかで、息子や孫の代まで引き継げる家づくりができたことは、まるでRebornの回し者みたいですが、本当に重要でしたね(笑)」
西洋漆喰や無垢材などは安価な資材に比べて導入コストはかかりましたが、経年変化も楽しめるうえ、耐候性に優れた素材でメンテナンスなどは長年不要なので、ランニングコストが抑えられる点も魅力だと言います。
奥様:
「完成して売り切りではなく、住み手の先のことまで考えた家づくりの提案にはすごく信頼し、感謝しています」
伝えたいのはフレキシブルなカスタムの可能性
そんな大満足の家づくりをかなえたご夫妻が、これから家づくりをする人に向けていちばん伝えたいことは「規格プランは高性能なことはもちろん、住み手によっていくらでも自由にデザインできる」ということだそう。
奥様:
「Rebornの売り文句は『断熱職人』ですし、垢抜けたデザインやディスプレイがされている住宅展示場と見比べると、規格プランは野暮ったく見えるかもしれません。総2階は和風っぽくもなりがちですが、アレンジ次第でオリジナリティを表現できますし、長い目で見たら断熱と耐震は上っ面ではない価値があることは、どうしても伝えたいですね。規格プランなら手頃な金額で高性能な家を実現できるのに、数カ月で完成してしまうような住宅を建てている人を見るともったいないと思ってしまいます」
ご主人:
「Rebornでは質実剛健な家づくりができますが、自分がやりたいことをちゃんと伝えることができれば、アレンジした住まいも実現できます」
一方で、Rebornは提案型ではない分、自分たちの明確なビジョンやプランがないと、“今風”のデザインはできないそう。だからこそ、南澤さんご夫妻は「素敵な家を建ててもらった分、自分たちがRebornのホームページで家づくりを紹介することで一役買いたい」と話します。
奥様:
「いろいろな情報があふれている今の時代はお施主さんの要望も多様化していますし、ざっくりと大風呂敷を広げている人たちに対しては、いろいろなパターンを見せてあげることが必要です。塩原さんのブログはすごく勉強になりますが、ブログを掘り下げないと施工事例などがわからないのがネック。現状はニッチな層や建築に詳しい人しか取り込めなくてもったいないので、ホームページでいろいろな事例を発信していってほしいというのがRebornへのリクエストかな。そのために私たちの施工事例がお役に立てたら」
そのうえで、Rebornではリフォームも注文住宅もでき、性能とコストの両方が見合う規格住宅も造れ、柔軟にカスタマイズできることをもっと広く伝えたいと話します。
奥様:
「Rebornでは決まった範囲から素材や設備を選ぶのではなく、自分で納得して選んだものを使え、結果的に同じ規格プランで建てた家もひとつとして同じ住まいがなく、みんな違うのがいいところです。この魅力を多くの人に知ってもらえたらうれしいですね」
その熱い語り口には、Rebornへの感謝と今後の期待が込められているようでした。
記者感想
ドライフラワーを使ったインテリアや、外国暮らしのようなペンダントライトなど、細部までこだわりを感じる南澤邸。キッチンや和室空間も大きく定型からアレンジしていますし、天井の漆喰の塗り方ひとつとっても、同じ規格プランの住宅でもこんなに変化するのか! と驚きました。規格プランといえども、Rebornの自由度の高さを実感できましたし、「本当によい家を造ってもらったRebornには恩返しがしたい」と話す様子からは、いかに信頼関係が構築されていたかも感じました。
なお、ご主人は仕事柄、自然災害の現場に出向く機会も多く、何十年もの住宅ローンを背負った家があっという間になくなってしまう様子を見てきたことから、耐震性も強くこだわったそう。その点でも、数値で「耐震等級3」を示すRebornには大きな信頼を置けたのでしょう。
一方で、南澤さんご夫妻は大切にしたい価値観が明確だったからこそRebornに出会え、家づくりが成功したともいえます。実はインタビュー後に、さらに奥様から補足のメモをいただいたのですが(ここからも家づくりへの情熱が伺えます)、そこには「Rebornに望むこと」として「もう少し女子目線、主婦目線でちょっとした相談やコーディネートをしてくれる機会があったら」との言葉がありました。今回、ホームページがリニューアルしたことで、今後は、より、これから家づくりをする人にとって自分らしい住まいへの確かなイメージが持てるような情報も発信していけたらよいのかもしれません。そうなれば、規格プランの施工事例のバリエーションもより豊かになっていくことでしょう。
ライター:合同会社ch. 島田浩美
写真:FRAME 金井真一