住まいづくりでは、工務店やハウスメーカーといったパートナー選びが重要です。一方で住み手自身が主体的に情報を集め知識を重ねることも大切。知ることが、より納得いく選択へとつながるからです。今回取材したFさんは仕事柄建築に詳しい背景がありつつも、自分で時間をかけてリサーチし考えることにより、予算内で理想の住まいを完成させました。その言葉からは、住み手が学ぶ大切さが伝わってきます。
スタートは、信頼できる設計者探し
1歳、2歳、3歳の元気な3兄弟の笑い声が響く住まい。Fさん一家が新居を構えたのは2022年、次男が生まれてすぐのことでした。「結婚してすぐに住まいづくりを計画しました」と話す夫のNさんの仕事は建設コンサルタント。住宅は専門領域ではないものの、工務店の見極め方や建設業界の契約について豊かな知識がありました。住まいづくりのパートナーである工務店(設計者)の重要性を熟知しているからこそ、その選択にはじっくり時間をかけたといいます。
Nさん:
「最初に信頼できる設計者を見つけて、それから土地を決めたいと考えました。僕にとって住まいづくりは初めての経験。“この土地に建てたらどんな家になるか”を気軽に相談できる設計者の存在が、土地選びに先がけて重要だと思ったんです」
家庭菜園に植えた桃の木を三男と眺める夫のNさん
妻のKさん。Nさんとは高校の先輩後輩の間柄なのだそう
工務店選びの基準の一つにしたのが、住宅を対象にした補助金制度を活用しているかどうか。中でも注目したのが、国土交通省が行う「地域型住宅グリーン化事業」の補助金制度でした。地域資源を活用し、気候風土に合う良質な住宅の建設に対して支給されるもので、その活用が会社の姿勢を表す指針になると考えたのです。同制度を使う工務店のうち、施工エリアに上田市を含む約20社の資料を収集。相談会や見学会へ足を運び、各社の考え方やスタイルを研究しました。
Nさん:
「僕自身も勉強しなければと考え、工務店やハウスメーカーにはできるだけ直接話を聞きに行きました。トレーニングと言ったらおかしいけれど、各社の考え方や方針を聞くことで『家づくりってこんな感じなのか』『自分にはもっとこういう勉強が必要だな』と知ることができて、勉強のきっかけになりました」
見学会では資料を配布されない場合も多いため、物件の間取りを手書きでメモしていたそう。「設計者がどんなことを考えて設計しているのか、知りたかったんです」とNさん。バラエティに富んだ間取りを何十軒も見るうち、自分たち家族が住まいに何を望み、何に魅力を感じるかが明確になっていきました。
リビングから出られる広いデッキは子どもたちが遊んだり、農作業の物置き場として活用
デッキと庭をつなぐ階段は夫のNさんがDIYで制作
Rebornとの出会い
足かけ3年に及んだ工務店探し。その中でRebornに惹かれた大きな理由が、見学会やホームページ、SNSなど、多彩な情報発信だったと言います。
Nさん:
「Rebornのホームページや設計士の塩原真貴さんを始めスタッフの皆さんによるブログは情報量が多く、どんな住まいを作っているか、どんな考えで取り組んでいるかがよく分かります。日々努力を重ねてアップデートし続けていることも伝わってきました」
玄関のドアはRebornオリジナルの木材貼りに
広い庭で遊ぶ長男と次男
もちろん予算も重要です。Nさんが確認したのは、県庁の閲覧室や各建設事務所で閲覧できるRebornの工事経歴書。この資料を見ると、実際の工事をどの程度の価格で請け負っているか確認することができるのです。
Nさん:
「広告では安く建てられると謳っている会社も、調べると実際の工事費は高額という場合もあります。でもRebornは、実際の価格も安かったんですよね。それも依頼の決め手になりました。
そしてやはり、塩原さんに出会えたことが大きかったですね。手間を惜しまず常に僕らのために考えてくれるし、バランス感覚がすごくいい。些細なことも相談すれば信頼できる答えをくれるから安心でした。正直、会社の利益を求めるのならここまでする必要はないんじゃないかと思うぐらい。本当にありがたいです。あまりに働きすぎて過労死しないか心配ですけれど(笑)。一方で、僕たち住み手も勉強が必要だと感じさせてもらったことも良かったと思います」
外壁はメンテナンスコストが低いスギ材のサイディングに。庇が夏の直射日光を遮る設計
1階もデッキに設けた下屋が室内への直射日光を適度に遮ります
見学会に何度か足を運び、Rebornへの依頼を正式に決めた夫妻は、上田市内にある妻Kさんの実家に近いエリアで本格的に土地探しをスタートしました。
土地探しはもっぱら「足を使って調べる」主義。週末ごとに希望エリアを歩き、気になる売土地を見つけるたび住宅地図にマーキングして不動産会社に問い合わせました。当時の地図を見せてもらうと、たくさんのマークが書き込まれています。良い土地が見つかると、設計士の塩原さんに相談。その数は1年で10件以上にのぼりました。
3年以上に及んだ土地探し。土地情報を書き入れた当時の住宅地図
静かな住宅街に位置する住まい。広い敷地の一部を家庭菜園に
Nさん:
「あくまで土地を決めるのは僕たちなので、塩原さんは比較するようなことは言いませんでした。ただ『ここに建てるならこうした造成費用がかかります』『この土地にはこんなデメリットがあります』といった検討材料をフラットに教えてくれる。さらに『ここで建てるならこんな感じの設計ですね』と、さっとスケッチを描いてくれるんです。僕はその条件とスケッチを持ち帰り、妻と相談すればいいだけだから(笑)助かりましたね」
一度は希望に合う土地を見つけたものの、仲介する不動産会社への不信感から断念。そして巡り合ったのが現在の土地です。以前から相談していた不動産会社が「良い土地が売りに出ました」と連絡をくれたのだそう。しかし古いアパートが建った状態で、解体費用は買主負担が条件でした。予算をオーバーしていたため「解体費用が売主負担になれば買います」と伝えていたところ、時を経てその条件で契約できることに。すぐに塩原さんに連絡し、契約を決めました。
約3年に渡って土地を探す中で、「いい土地はすぐに大手ハウスメーカーの分譲地になってしまう」と痛感していた夫妻。特に希望のエリアはなかなか土地が売りに出ないことから「出会ったらすぐに動くことが重要」と考えていました。Rebornに紹介されたファイナンシャルプランナーに相談して自身が無理なく支払える予算を把握し、即決できる準備をしていたことが功を奏したのです。
敷地の南側を庭に。さまざまな草花や樹木を植えています
Kさんの父が旅先で手に入れたからたちの実を植えて育てています。北側の水路との間には落下防止の柵を
規格プランをアレンジした暮らしに寄り添う住まい
購入した敷地は約500㎡(約150坪)と広く、東側が道路に面していました。南側を広い庭にして住まいは北寄りにレイアウトし、東側は駐車スペースに。西側は夫妻の希望で広い家庭菜園として、自家栽培を楽しんでいます。日当たりも風通しも良く、近くに住むKさんの父のアドバイスをもらいながら土に触れる日々を過ごしています。
トマトにじゃがいも、枝豆、玉ねぎ、とうもろこしと多彩な野菜を植えて楽しんでいます
前面道路から見た住まい。手前が駐車スペース、奥が家庭菜園
2階建ての住まいは、Rebornの規格住宅を一部アレンジして設計。規格住宅の完成度の高さも、Rebornに依頼を決めた理由の一つでした。
夫妻:
「自分たちで一から作るより、設計士さんが考え抜いた規格住宅の方が使いやすくコストも抑えられると考えました。Rebornの規格住宅はある程度カスタムできるし、実際に暮らしやすい。例えば1階は天井板を張らず構造梁を表して仕上げているので、天井高約2.7mと開放的です。お金をかけて吹き抜けにしなくても、規格プランで気持ちよく過ごせる設計なんですよね」
1階はリビングダイニングキッチンと水回りに加え、北側に子どもたちが遊んだり本を読んだりできる部屋をレイアウト。普段は引き戸を開け放ち、リビングと一体にして過ごしています。広いリビングは子どもたちが走り回って遊ぶのにぴったり。子どもたちがまだ幼いためダイニングにはローテーブルを置き、床座で過ごしています。
明るくのびやかなリビングダイニングキッチン。右手が階段、右奥に水まわり
リビング北側の部屋にはデスクと書棚を造作して子どもたちのスペースに
2階は明るいホールを中心に、西側に夫妻の寝室、東側に2つの子ども部屋を配置。1階の洋室もカウンターデスクを造作し勉強ができる空間にしつらえているため、将来は勉強は1階、眠る時は2階といった使い分けもできそうです。
光がさんさんと注ぐ2階ホール。吹き抜けを通じてリビングの声や気配が伝わります
子ども部屋にはデスクを置き、現在Nさんの書斎として利用
読書やマンガが好きな夫妻たっての希望が、本をたくさん置けるスペースを作ることでした。2階ホールの一部に奥行きの深い書棚を造作し、手前の棚をスライドできる設計に。本の重量を支えるため、壁で囲まれた洗面脱衣室の上部に当たる部分に書棚をレイアウトしました。そのため、2階は規格プランの西と東を反転させています。
夫妻:
「通常なら壁の二面、三面を使うぐらいの書棚が必要でしたが、スライド式にすることで約1畳のスペースに収納することができました」
2階ホールの一角に造作した書棚。手前の棚をスライドすると奥の棚にアクセスできます
夫妻の独身時代からの愛読書や子どもたちの絵本をたっぷり収納
2階の広いホールでは子どもたちと遊んだり、絵本を読んだり。子どもたちが大きくなって子ども部屋を本格的に使い始めれば、みんなで過ごすセカンドリビングとしても活用できそうです。ベランダがない設計ですが、洗濯物は日当たりの良いホールで室内干しにしているため不便はありません。
3人のお子さんを育てるにぎやかな日々を支えるため、キッチンは「家事の手間を減らすこと」を重視。掃除しやすいステンレス天板のシステムキッチンは、高性能のドイツ・ミーレ製食洗機が入るモジュールを条件に選びました。
Nさん:
「食洗機の導入は、僕が強く希望しました。ミーレの食洗機は高額ですが、水道代+ガス代と比較シミュレーションしてみたら23年でペイできる計算だったので購入を決めました。平日は1日1回、土日は1日3回稼働させて大活躍です」
タカラスタンダードのシステムキッチンにミーレの食洗機をビルトイン。吊り戸棚を両側に造作して収納を確保。手前にはパントリーも
造作収納の幅に合わせてキャスター付きゴミ箱をDIYで制作
納得できるエネルギーを選択
住まいで使うエネルギーとランニングコストにも熟考を重ねた夫妻。当初から太陽光発電の導入を希望し、塩原さんと相談して一般的な住宅よりやや多い6kWの発電パネルを搭載しました。暖房のパネルヒーターは熱源にヒートポンプを使っていますが、発電で消費エネルギーを十分にカバーし、さらに売電してプラス収支を維持しています。光熱費は、広さが半分以下だったアパート時代とほぼ変わっていないのだそう。
Kさんの趣味のバレエを練習できるようリビングの一角にバーを設置。引き戸の一面をミラー貼りにして姿勢をチェック
バーは子どもたちの遊び場にも
太陽光パネルの容量を決定する上で頼りになったのが、Rebornが設計前に行う暖冷房コストのシミュレーションでした。建物の断熱性、気密性に基づいて熱損失を算出し、それを元に空調にかかる年間コストを計算するのです。
Nさん:
「こうした現実的な価格を算出してくれるかどうかで、選択は大きく変わります。コストが予測できれば太陽光発電の売電量をシミュレーションして容量を決められるから、納得度が全然違う。他にも算出してくれる工務店はあったんですが、設計者が現実的な数値を分かっていないためか、途方もなく高額な金額が出てきたりする。コストを抑えて理想に近い家作りをするためには、住み手側も勉強が必要だなと思いました」
笑顔が絶えない子どもたち
庭のプランターで大切に育てるイチゴ
建物の断熱性能が高いため、夏は2階ホールに設置したエアコン1台で家じゅうが快適。リビングの吹き抜けと階段を通じて1階まで冷気が降りるよう設計されています。冷房は基本的に24時間連続運転して冷気を保ち、時々サーキュレーターを部屋干しの洗濯物に当てて空気を対流させているそう。「お客さんが来たり人が増えると、ちょっと暑いぐらいかな」と夫妻。冬も、温水が内部を循環して輻射熱で暖めるパネルヒーターを24時間稼働させることで家中が快適に保たれています。
Nさん:
「パネルヒーターは表面が熱くならないので、万が一子どもが触れてしまっても安心です。この前の冬は、気温に合わせて温度を調整する『自動モード』にしてみたところ快適でした。家が心地いいから、会社に行くのが嫌になりますね(笑)」
2階ホールに設置したエアコン1台で夏は快適
暖房は各室に設置したパネルヒーター。玄関ホールに設置したものはフック付きタイプで、コート類をかけて乾かせる仕様
給湯にはガスを使用。エコキュートも検討しましたが、毎日お湯を使わないとタンク内の水が不衛生になる可能性がネックになりました。こだわったのは、洗濯機でお湯も使えるようにしたこと。お湯で洗濯すると汚れが落ちやすく生乾き臭もつきにくいため、満足度が高いのだそう。
建設費もエネルギー費も高騰する今、住まいの新築に迷う人も多くいます。そんな人へのアドバイスをNさんに伺いました。
Nさん:
「家を建てたいなら、“今すぐ建てる決断が一番安い”と僕は思います。金利も物価も上がり続け、下がる見込みはないですよね。だから今日契約するのが一番安い。大切なのは信頼できる設計者を探して、支払い能力に対して無理のない予算で計画することです。その時、住み手側も勉強しなきゃいけない。ただ、最初から塩原さんのような人に巡り会えた人は勉強する必要はないかもしれません(笑)」
「家を建てて良かった」と笑顔で話す夫妻。お金だけでなく、子どもたちがのびのびと遊べる庭や広い室内という環境に大きな価値を感じているからだと話します。「ご近所に気を遣って暮らすこともコストの一部と考えると、戸建てはとても良い買い物だと思います」。時間をかけて自分の足で情報を集め、学び、比較検討してきたからこその言葉だと感じました。
記者感想
建築業界をよく知る夫のNさん。自身の知識を活かしつつ、初めての住まいづくりの経験を楽しんだことが伝わってきました。的確かつ地道なリサーチの末にRebornに決めた経緯を伺うと、客観的にRebornの魅力を実感します。住まいづくりは大変なことも多いですが、できるだけストレスなく進めるためには、信頼できる住まいづくりのパートナーを見つけることが重要なのだと感じました。