暮らしのことば

家族5人の「好き」を詰め込んで。遊び心とアイデアで自分たちの暮らしをつくる

上水内郡飯綱町|大川様|2020年
新築

「今日は家で何をして過ごそう?」。家で過ごす時間が増えた今、住まいを楽しむこと、快適に整えることは、なんでもない休日も楽しみにしてくれます。心地よい過ごし方の発見は、住まいへの愛着をいっそう高めてくれるはず。

飯綱町に暮らす大川さんの住まいは、ゲームにレコード、DIYで作ったピザ釜と、家族5人の「好き」が詰まった空間です。Rebornへの信頼と二人三脚の家づくりが、世界に一つの住まいを完成させました。

「好き」の世界観で住まいをつくる

大川邸を訪ねたのは、よく晴れた2月の朝。真っ白な雪景色と青空に、山荘のようなスギ板貼りの外壁がよく映えます。「家が完成した時、壁の色はこれじゃなかったんです」。施主の大川真也さんが意外な話を教えてくれました。

真也さん:
「外壁のスギ板の色は最初グリーンがかっていて、とても気に入っていたんです。工事が始まった時は、感動して写真を撮りまくりました(笑)。ずっとこの色がいいと思っていたんですが、2年たつ間に太陽の光を浴びてだんだん色が変わってきて。でも、今の色もすごくいい。ここからまた経年変化でシルバーになっていくので、それも楽しみにしています」

約2年前、工事中に足場が撤去された時の様子。グリーンを帯びたスギ板が印象的!

現在の南側外観。経年で味わいを増すスギ板の外壁が飯綱の風景になじむ

外壁をグリーンにすることは、設計を手掛けたRebornの塩原真貴さんの提案でした。当時を振り返って真也さんが見せてくれたのは一着の古着。昔から愛用しているイギリスの老舗アウトドアブランド、バブアーのジャケットです。この洋服の色が、塩原さんのインスピレーションの源になりました。

真也さん:
「打ち合わせにも満たない雑談の中で、『こんな古着が好きなんです』と塩原さんに見せたことがあったんです。そうしたら、よく似た色の外壁を提案してくれた。こちらが何気なく言った好きなもの、それも建築じゃなくファッションのことを覚えていてくれて自分の家に使ってもらえるなんて、すごく嬉しかったですね」

愛用のオイルドジャケット。この色が外壁のヒントになった

古着と音楽を愛する大川真也さん

「間取りもデザインも、“こうしてほしい”と具体的に伝えた記憶はあまりないんです」と大川さん夫妻。打ち合わせや雑談の中で何気なく話したライフスタイルや好きなものを塩原さんが拾い集め、図面に落とし込んでいく方法を軸に、住まいは作られていきました。

真也さん:
「他の住宅会社は自社のことをアピールするばかりだけど、塩原さんはこちらの話を聞くことから始めてくれた。それがありがたかったです」

ともに飯綱町出身の真也さんと由美さん夫妻は、10歳から14歳まで3人の子どもたちと5人暮らし。長らく真也さんの実家に同居していましたが、築年数を重ねた建物の寒さに悩んでいたことをきっかけに、世帯を分けて敷地内に新築しました。

敷地は、お祖父様が営んでいたキノコ栽培用のビニールハウス跡地を農地転用。南側に開けていて、日当たり抜群です。人気のRebornゆえ相談から着工まで1年を要したものの、「じっくり考えられて、かえってよかったです」と夫妻。

歴代、リンゴ農家とキノコ農家を営んできた大川家の10代目である真也さん。リンゴ箱に屋号を塗料で吹き付けるためのステンシル型を玄関に飾って

リビングのテレビ背面は好きな場所に板を差し込むディスプレイ棚。古いカメラと小さなロッキングチェアはともに真也さんのお祖父様の形見

Rebornに住まいを依頼したのは、真也さんの勤務先の工事を手がけていた縁から。「今思うと、スムーズにRebornにたどり着けてラッキーでした」と振り返ります。

真也さん:
「会社の工事に来てくれたスタッフの方がすごく楽しそうに働いていて、職人さんたちもあまりにも感じが良い人たちばかりだったから、自宅もお願いできないかなと。Rebornの完成見学会に娘を連れていったら『この家、気持ちがいい』と言ったことも大きかったですね」

イメージを伝えて、プロに委ねる

夫妻が当初考えていたのは、見学会で惚れ込んだRebornの規格住宅でした。けれど子ども部屋が必要だったため「2階に個室を4つ作りたい」と伝えると、塩原さんは「その広さは規格住宅ではできないですね」ときっぱり。予算はそのまま、自由設計に変更します。

1階と2階がほぼ同じ形の「総2階建て」にすることで、ゆとりある床面積を確保。シンプルな箱型の建物は施工費用を抑えられるうえ、デザイン的にも夫妻の希望にぴったりでした。

真也さん:
「いつか打ち合わせで『シンプルな形の家がいい』『片流れ屋根が好き』と話したことがあったんですよね。それを塩原さんが覚えていて、形にしてくれた。このあたりは真冬は屋根に50cm以上の雪が積もることもあるんですが、自然に滑り落ちる片流れ屋根の設計も理にかなっています。塩原さんは多くを語らないから、最初から織り込み済みだったのかは分からないですけど(笑)」

緩やかな1.5寸勾配のガルバリウム鋼板の片流れ屋根から自然に雪が落ちる設計

キッチンの窓の向こうに雪が落ちるが、雪の壁が窓を覆って暗くならないよう計算されている

ヒアリングをベースに完成したプランは、最初の段階ですでに満足度の高い内容でした。とはいえ、細かな調整を含めて打ち合わせは10回以上に及んだそう。

真也さん:
「考えるほど選択肢が多すぎて、何がいいのか分からなくなって(笑)。それも、塩原さんにある程度お任せした理由です」

真也さんがよく覚えている塩原さんの言葉は、「自分が良くないと思うものは施主に勧めたくない」というものでした。断熱性や耐震性、機能性。どれを取っても「一般的なハウスメーカーや工務店のレベルより高い基準で判断していると思います」と真也さん。

真也さん:
「それほど高いレベルの会社に、素人である僕らが委ねられたことは幸運だったと思います。それに塩原さんは、どんな質問にも正直な答えを返してくれました。照明計画に住宅設備、間取り、コンセント位置といった細かなことまできちんと答えて、私たちの決定を支えてくれた。誘導されているかも?と感じることもありましたが(笑)、最終的に自分たちが決めたこと。すべて納得しています。

私たち夫婦は介護の仕事をしていて、そこでも感じることですが、“より良い、本人が納得する自己決定の支援”には優れたバランス感覚が必要なんです。押しつけないこと、その人に合った提案をすること。塩原さんの姿勢に、まさにそれを感じました」

「Rebornは何にいくらかかるかがはっきりしていたから、費用についても心配ありませんでした」と夫妻

ガレージから雨に濡れず移動できる玄関。ドアは外側にローズウッド材を使用。存在感のあるブラケットライトを合わせて趣ある空間に

理想の過ごし方から発想したリビング

1階は階段を中心に南側にLDK、北側にサニタリースペースと、ゾーンを振り分けたプラン。行き止まりなく回遊できる間取りで、家事や朝の身支度がストレスなく進みます。買い物から帰ったら玄関からパントリーに直行して買ったものをしまい、キッチンにつながる動線も効率的。

リビングの設計のベースになったのは、「これをして過ごしたい」という具体的な行動イメージでした。家族共通の趣味であるゲームやテレビ、配信動画を楽しむために、キッチンからも見やすい正面の壁に大型テレビを配置して、その背面はディスプレイを楽しめる壁面ラックに。隣には真也さんの趣味のDJブース。レコードにサイズを合わせた造作収納にはコレクションがずらりと並び、壁面に設置したスピーカーからいい音が空間全体に響きます。階段下の空間にも、ゲームやネットで遊べるPCデスクを造作。

過ごす場所や機器に合わせて、コンセントや照明も適切に配置しました。半径2メートル、手の届く範囲からイメージを膨らませて生まれた空間なのです。

広い玄関には家族全員分が入る靴箱。スムーズに身支度できるよう上着や通学カバンの収納スペースも

玄関から洗面スペースに直行して手洗いできるプラン。右手はパントリーで、買い物から帰ったらスムーズに食材を収納できる

向かって左の白い壁の反対側にバスルームや洗面など生活動線を集約。来客時も気兼ねなくトイレや洗面を使える

造作テレビボードにはゲームやヘッドホンを収納。コンセント位置は真也さんが施工現場に立ち会い、使いやすい配置を確認

2階にそれぞれの個室もありますが、自然とリビングに集まって過ごすのが大川家の定番です。家族共通の趣味のゲームで対戦したり、真也さんが長女の結さんにレコードを使ってDJプレイを教えたり、ハンドドリップのコーヒーを淹れたり。

真也さん:
「一人ひとり別のことをしているんだけど、なんとなくみんなリビングにそろうことが多いです。きっと一番居心地がいい場所なんですよね。ソファでゆっくり映画を見るのが夢だったんですが、子どもたちと奪い合いです(笑)」

日当たりのいいソファのまわりに自然と家族が集まってくる

コーヒーのドリップを練習する結さん

ゲームや音楽、マンガなどエンタメが充実した大川邸。「遊んで楽しい家」は、当初から家づくりのテーマの一つでした。真也さんと由美さんは勤務時間や休日が不規則なため家族そろって出かける機会が少ないうえ、設計時はコロナ禍真っ只中。子どもたちのために、家の遊びを充実させたいと考えたのです。

真也さん:
「僕自身が遊びたいのももちろんですけど(笑)。最近はミニマムな暮らしが注目されていたり、この『暮らしのことば』コーナーに登場する家もすごく片付いていて感心したりするけれど、うちはみんなが好きなものを自由に置いておく家なんですよね。

ただ、物は多くてもきれいに保ちたい。だから収納は基本的に扉のないオープン収納にしています。どこに何があるか一目で分かるし、物の住所を決めておけば子どもたちも自然に片付けられるから。……実際はなかなか片付いてないですけどね(笑)」

階段下にはモニターとゲーム機器を置いたデスクスペース。二人並んでゲームプレイできる。デッドスペースになりがちな三角部分は書棚に活用

リビングの一角は真也さん愛用のレコードスペース。盤のサイズに合わせて収納を造作。最近は結さんもDJプレイを教わって練習中

生活動線もプライベート空間もゆったり

キッチンは、大人二人が背中合わせで余裕を持って作業できる広さに設計されています。

由美さん:
「私たちの勤務時間が不規則なので、子どもたちだけで食事することもよくあるんです。きょうだいで協力して料理や配膳ができるように、広いキッチンにしたくて」

大人3人でも余裕を持って作業できる設計。開放的ながらIHヒーター正面は壁で隠した。正面のドアはデッキテラスにつながり、緊急時の避難経路の一つになる

階段は壁の一部をオープンに。これは「子どもたちが家に帰ってすぐ2階に上がるときも、自然に顔を合わせるようにしたい」という由美さんの希望から

キッチン脇には、塩原さんに勧められて導入した電気を使わない保冷庫「クールパントリー」。床材を入れず床下とダイレクトにつなぐことで、電力を使わず涼しい空間になっています。野菜や飲み物など、冷やして保存しておきたいものを入れておく納戸代わりの場所です。

真也さん:
「今は2月ですが、クールパントリー内の温度は10℃。夏場も15℃ぐらいまでしか上がりません。断熱が徹底されている我が家は真冬も室温が19℃を切らないので、野菜を常温で置いておくと傷みやすいんです。かと言って屋外に出しておくと凍ってしまう。ここはちょうどいい温度だから、野菜の保管に重宝しますね。米や自家製梅ジュース、ビールなんかも置いています。

ただRebornの家は床下が意外と暖かいので、飯綱町と同じくらい冬の気温が低い地域でないと期待するほどは冷えないかもしれません。

便利ですが設置費用も高くて、うちの贅沢品ナンバー1です(笑)。扉にペアガラスのサッシを使って現場で造作しているので、無理ないですね。ちなみに贅沢品のナンバー2は1階のウッドデッキ、ナンバー3は2階のウッドバルコニーです」

玄関から直線上にパントリーがある。リビングから見えないのもうれしい。右下の扉付き収納が「クールパントリー」

クールパントリー内部。手を入れてみると、確かに室温よりかなり低い

幅1.2mと広い洗面台もこだわったポイント。朝晩の混雑する時間帯も2人並んで使えるうえ、脱衣室と洗面カウンターを分けたことで、誰かが入浴中でも気兼ねなく使えます。玄関から直行できる位置にあるので、帰宅してすぐに手洗い・うがいができるのも便利。

二人並んで歯磨きや身支度できるので、朝も混雑しにくい

トイレは床と腰壁にコルクタイルを使用。掃除しやすく、濡れてもシミになりにくい

2階は、階段を中心に4つの個室を配置した十字型のプラン。それぞれの部屋がプライバシーを保ってレイアウトされています。

階段を上ると四方にそれぞれの個室が並ぶ。左奥は長男の碧(あおい)くん、右奥は夫妻の部屋。左中央のドアはトイレ

夫妻の寝室はベッドに寝たまま見られる位置にテレビを設置。1階のテレビがゲームで占領されていても、ここなら一人のんびり好きな番組を楽しめる

階段脇の家族共有の造作本棚にはマンガがずらり

碧くんの部屋は、2方向の窓から絞った光が入る落ち着いた空間

心地よさを感じるのが、2階ホールが通路としてだけでなく部屋のように過ごせるスペースにもなっていること。総2階建てで、床面積に余裕があるからこそのプランです。

西側は部屋干しスペースに、階段脇は家族共有の本棚を造作して小さなライブラリーに。南側のスペースは正面に山を眺める窓を設け、ルームランナーとハンモックを設置して部屋のようにしつらえています。

真也さん:
「この窓から見る風景は一枚の絵のようで、毎日、どんな時間に眺めても飽きないんです。朝の光も夕暮れも、雷が鳴っている日もいい。冬の満月の夜は雪に反射して、すごくきれいで。遠くまで風景がよく見えて、本当に気持ちがいい場所です」

2階ホール南側の窓。広い空と山並みを一枚の絵のように切り取る

窓に面した空間にハンモックを吊るし、部屋のように心地いいスペースに

住まいの随所に、心地のいい場所が点在している大川邸。2階からさらに階段を上ると、天井が低い小屋裏収納につながります。シーズンオフのものをたっぷり収納できるうえ、子どもたちはここに布団を敷いて秘密基地感覚で眠ることも好きなのだそう。

2階から階段を上ると小屋裏収納。階段下の西向きのスペースは部屋干しに活用している

扇風機、加湿器など季節家電やシーズンオフの衣類などをたっぷり収納できる小屋裏

耐震等級3と吹き抜けのデザインを両立

希望の間取りやデザインを形にすることと両立してシビアに追求したのが耐震性でした。Rebornの新築住宅は、耐震等級の最高ランク=3をクリアすることが標準。積雪量が多い飯綱町では、屋根に積もる雪の荷重を加味したうえで強度を保たなければなりません。基準になる積雪量は高さ195cm、重さにして約2t。その量の雪が載った状態で震度6クラスの地震に襲われても住み続けられるよう、設計する必要があります。

完成した大川邸は、リビングの梁の高さひとつとっても強度の高さがうかがえます。「構造計算のシミュレーションを見ると、力を受ける流れが分かる。感心します」と真也さん。

梁せいの高さが高い構造耐震性を物語る。リビングダイニングの天井の一部を吹き抜けに変更した

構造計算用ソフトによるシミュレーション図面の一部。屋根上の雪の荷重を母屋(もや)が受け止め、束(つか)を伝って小屋梁へ、さらに2階の柱を伝わって1階の梁に伝える様子が分かる

耐震等級を高める場合、ネックになるのが吹き抜け。床面積が減ることで、建物全体の耐久性がどうしても弱まってしまうためです。

けれど由美さんにとって、開放感のある吹き抜けは譲れない希望でした。一度は諦めかけましたが、「後悔したくないから」と途中で吹き抜けを希望。設計変更に踏み切ります。

真也さん:
「しかも吹き抜けの下に大きな窓があるプラン。荷重を支える壁も柱も少ないから、難しかったと思います。でも塩原さん、なんとかひねり出してくれましたね。吹き抜けがあるとやっぱり明るいし、2階にいる子どもたちの気配が伝わってくるのもいいんです」

由美さん:
「ご飯だよ!って呼びやすいですしね(笑)。吹き抜けは最大の設計変更でした。しかも同じタイミングで『やっぱりガレージも追加したい』と言ったんですよ。そうしたら塩原さん、『えー!』って(笑)」

真也さん:
「予算ギリギリで進めてくれていたので、今さらガレージ追加と言われて厳しかったんだと思います。でも二期工事に分けて、なんとか2台分のガレージを作ってもらいました」

リビングに明るさと開放感をもたらす吹き抜け。上下階で会話もしやすい

西側にガレージを2台分設置。除雪機や自転車置き場としても重宝する

念願の吹き抜けは、開放感と明るさ以外に思わぬ効用もありました。吹き抜けがエアコンの風の通り道になり、1階が過ごしやすくなったのです。

真也さん:
「夏場、小屋裏のエアコンをつけて2階の廊下にサーキュレーターを置いておくと、吹き抜けを通じて1階まで冷気が降りてくるんです。空気の通り道が階段と吹き抜けの2か所あることで効率が良くなって、1階のエアコンをつけなくても涼しくなった。思わぬ収穫でした」

暗雲立ち込めるDIY塗装

施工期間は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う小中学校の休校期間中。家と同じ敷地内で進む工事へ子どもたちはしょっちゅう見学に出向きました。特に長女の結さんは、塩原さんとキャッチボールをしたりと仲良く過ごしていたそうです。

完成間近になると、Reborn恒例の施主自身による塗装工事をスタート。室内の壁や天井はもちろん、屋根の破風部分(側面)や軒天(軒の裏側)も、外に組んだ足場に登って夫婦でチャレンジしました。

由美さん:
「その時にね、落ちました(笑)」

真也さん:
「外の足場にちょうど脚一本分だけ隙間があって、由美が落ちたんですよ……。そんなに高い所じゃなかったんですけど、落ちて鼻の穴まで真っ黒になって(笑)」

「新しい家ができて嬉しい」と話す結さんもDIY塗装に参加

軒の裏側も自分たちで塗装

室内の天井や壁の塗装は大工さんに混ざって、他の工事と同時進行。子どもたちも参加しました。その面積、約500㎡!

真也さん:
「素人が混じって塗るなんて、職人さんが嫌がりそうなものじゃないですか? そこをやらせてくれたから、ありがたかったです」

由美さん:
「私は焦りの方が大きかったですね。『○日までにやってください』って言われて、まじですか!って(笑)。とにかく塗る範囲が広いから大変でした。これじゃどっちが本業か分からない、介護士じゃなくなっちゃう!と思いながら……(笑)」

真也さん:
「確かに、やり始めると絶望するんですよ。これ終わるのかな?って。もともとDIYが好きだと伝えていたから、スタッフの笠井さんに『大川さんDIY楽しいって言ってましたよね。楽しいですよね?』と真顔で確認されたりして(笑)。でもね、やってみると確かにすごくおもしろかったです。もう一回やりたいぐらい(笑)」

壁も天井もDIYで塗装。階段下のスペースにはイケアで購入したLEDテープライトを貼った

塗装作業は「おもしろかった!」と結さん

悲喜こもごものDIY。家づくりの過程で、夫婦でもめた唯一と言っていい強烈な思い出も塗装中の出来事でした。

真也さん:
「由美が塗ったところがダマになっていたから『もっとこうするんだよ』と指摘したら、大げんかになって(笑)。それも、ものすごい夕立と雷の日に。外の水道でハケを洗いながら、びしょ濡れになってケンカしたよね」

由美さん:
「私も仕事で疲れて、イライラしていて。そんなこと言われるなら、もうやりたくない!と爆発しました(笑)」

塗装には性格が出やすいもの。DIY工程の揉め事も、「Reborn施主あるある」の一つかもしれません。

高気密高断熱の家がくれる幸せに、アイデアを足して

太陽光を活かすRebornのパッシブ設計は、かつて寒い「昭和の家」で暮らしていた大川さん家族の毎日を変えました。取材した日もリビングはぽかぽかと春のよう。「冬でもこんなに日が入ると思っていませんでした」と真也さん。各部屋に設置したパネルヒーターの輻射熱も穏やかに暖めてくれますが、「我が家で一番優れた暖房は太陽かもしれません」と話します。もちろん高気密高断熱ゆえ、一日中心地よい温もりが保たれます。

真也さん:
「この家に住んで、長年当たり前だった小さなストレスが減りました。実家では焼きたてのトーストもすぐ冷めてしまったけど、今は塗ったバターがちゃんと溶ける。子どもが小さい頃、風呂上がりは秒速で拭き上げなければならなくて、その間に自分が風邪をひいたりしたけれど(笑)、そんなこともありません。些細なことですが、じんわりと小さな幸せがが積み重なっているように感じます」

冬も暖かな住まいが家族の毎日を心地よく変える

春夏は日当たりのいいデッキテラスで過ごすことも。トリプルガラスの樹脂サッシで断熱性が向上し、室内は静か

冬はエアコンは使わず、パネルヒーターのみで快適に。穏やかながら体の芯まで暖まる効果は絶大です。

真也さん:
「パネルヒーターのある空間で過ごした後、コートを着ないで外に出てもしばらく寒さを感じない。体が“パネルヒーターバリア”で包まれるんですよ。5分ぐらいですけどね(笑)」

一方の夏は、「日差しを入れない」ことが肝心。庇で日射を遮ったうえで、クーラー+サーキュレーターで室内を効率的に冷やします。

真也さん:
「太陽高度に合わせて高さと奥行きが計算された庇は効果絶大です。夏至の日にサッシの上ギリギリに落ちた影を見て、『塩原さんすげえ』と唸りました。

これは断熱性だけではありませんが、基準とするレベルが高いRebornに巡り会えて、家づくりを依頼できたことは本当にラッキーでした。住み手側も知識を持つことを求められますが、対価としては安いものだと思う。塩原さんは他社の営業マンのように多くを語りませんが、それは『ここまでやって当然』という姿勢の表れなのかなと。“断熱職人”の商標に偽りなし。暮らし始めて実感しています」

夏は日差しを防ぎ、冬はできるだけ取り入れるように庇の高さと奥行きを設計

南側も自宅敷地。開けているため、日射がたっぷり室内に入ってくる

真也さん自身も、住み始めてから「どうすればもっと快適に過ごせるか」を勉強するようになったといいます。高気密ゆえ冬の結露に悩んだ時期もありましたが、自分で調べたり塩原さんに相談したりして加湿と換気を見直し、無事に解決しました。

1年目、特に試行錯誤したのは夏の過ごし方。実家ではエアコンを使っていなかったので手探りでクーラーとの付き合い方を検証し、ひと夏を経て快適な過ごし方が分かってきたと言います。

「パッシブ設計はもちろん頼りになりますが、自分で外の環境を整えることも必要だと思うようになりました。今年の夏やってみようと思っているのは、軒にオーニングをかけて室内への日射をきっちり遮ること。この家は断熱性が高いので、一度日射を受けて暑くなってしまうとなかなか冷えないんです。春でも暖かい日は室温25℃ぐらいに暑くなってしまうから、そろそろ準備しないと(笑)。逆に冬は日射取得がすごく大切。晴れた日はカーテンを開けることを子どもたちにも習慣づけています。

心地よく過ごすために、自分たちでできることもたくさんあります。手応えがあるから楽しいですよ。DIY好きな人に、Rebornの家はぴったりかもしれません」

雪遊びで盛り上がる!友達同士のような大川さん親子

真也さんが手作りしたピザ窯。大川邸は外遊びもこれからもっと進化を遂げそう

リビングとつながる広いデッキテラスではバーベキューを楽しむことも。庭には真也さんが趣味のDIYで作ったピザ釜!「今年は敷地にある古い井戸を復活させてみたい。それからヤギも飼ってみたいんですよ。庭の草を食べてくれるから」と真也さん。住まいで遊び尽くすアイデアは、まだまだあふれてくるようです。

記者感想

親子だけれど、時々友達同士のような空気感も漂う大川さん家族。「好きなことは気合いを入れて楽しみ尽くそう」という大川さん夫妻のスタンスが、家族の空気を作っているのかなと思いました。5人がリビングに自然と集まってそれぞれ好きなことをしている姿は楽しそうで、家を楽しく心地よくしつらえることの大切さを感じました。

ライター:石井妙子 

写真:FRAME 金井真一 

大川様
上水内郡飯綱町 大川様
家族構成夫・妻・長男・次男・長女
敷地面積470.28㎡
建築面積96.05㎡
床面積1階:77.39㎡ 2階:57.75㎡
延床面積 135.14㎡(40.95坪)
竣工2020年
断熱床:HGW16K245mm(105+140)
オーバーハング床:吹き込みGW18K400mm
浴室、玄関:土間床 基礎内断熱:スタイロエースII 3種B 外100mm 内50mm
平天井:吹き込みGW18K300mm
外壁:HGW16K225mm(柱間120mm充填/付加105mmKMブラケット工法)

屋根(小屋裏収納部分):吹き込みGW35K250mm
家のスペック玄関ドア:ガデリウス スウェーデンドア(eZドア)
窓:樹脂製 LIXIL エルスターX LOW-Eトリプルガラス アルゴンガス入り 樹脂スペーサー
換気:第三種セントラル換気 日本住環境 ルフロ400+ダクト配管φ100mm DCモーター
暖房:PS温水パネルヒーター暖房システム9台 灯油ボイラ(室内置きFF式)
冷房:壁掛けルームエアコン2台
屋根:アスファルトルーフィング940+t0.35mm ガルバリウム鋼板 立平葺き

外壁:t17.5mm福杉 ACQ加圧注入材(濃緑色)縦張り
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