妥協したくない。勉強してたどり着いたRebornのQ1(キューワン)という選択
「とにかく暖かい家を」という妻の希望と「ホコリは徹底的に排除してメンテナンスの少ない家にしたい」という夫の思い。そして、子どもたちがのびのびと走れる住まいを。そんな願いのもと、Kさんご夫妻が勉強した末に決めたのがRebornでの家づくりでした。この家でRebornの塩原さんがめざしたのが、“Reborn流パッシブハウス”。共働きで忙しい日々のなか、Kさんご夫妻は自分たちらしい快適な暮らしを叶えています。
自然エネルギーと木を生かした心地よい住まい
家の中を元気に走り回る子どもたち。回遊性のある間取りは家事動線が便利なだけでなく、小学1年生と年少という遊び盛りのふたりにとっても自由にかけ回れて楽しいようです。
松本市にあるK邸は、奥様のご実家の隣に建てた自由設計の新築住宅。Rebornらしい西洋漆喰の外壁と木製の屋根付きガレージが一体となった温かみのある特徴的な佇まいです。屋根に搭載されているのは、給湯とパネルヒーターの温水暖房をまかなうドイツ製のLATENTO太陽熱集熱器。陽当たり・通風ともに好立地である環境を踏まえ、設計者・塩原さんの提案によって取り付けられました。K邸は共働きのご夫妻のこだわりと塩原さんのアドバイスが生きた住まいなのです。
ガレージから直結した木製玄関ドアを開けると、オープンな玄関収納がある玄関ホール。室内はヒノキのいい香りが広がります。
Rebornオリジナルの高断熱木製玄関ドア
帰宅したら、上着などは玄関脇の収納へ
廊下を経て、普段、ご家族が過ごしているLDKへ。対面式のキッチンからは横長のリビングダイニングが見渡せ、南面の大きな窓から明るい陽光が注ぎます。窓の先は畑なので、道路や隣家といった視界を遮るものがありません。
このLDKで、まずはご夫妻がRebornでの家づくりに至った経緯や自由設計への思いをお聞きしました。
寒いのは嫌! キーワードは「新住協」
共働きで忙しく、転勤により県内のあちこちで暮らした経験があるおふたり。社宅やアパート暮らしのなかで痛感してきたのが、長野県の寒さだったといいます。
奥様:
「どの家もすごく寒くて、家の中で氷が張ったこともありました。暖かい家に住みたいという思いはずっとありました」
また、転勤のたびに引っ越すのも大変で、一時はおふたりの勤務地が岡谷市と長野市と離れていたことから、間をとって塩尻市に住んでいたりと、通勤にも苦労をしていたそう。奥様の産休・育休中はご主人が働く長野市で暮らしていましたが、広かったものの古いアパートで、アルミサッシの窓は結露もひどかったうえに西日もきつく、夏暑く冬寒い生活だったとか。そこで、奥様の職場復帰にあたり、就業年数的にそろそろ転勤も落ち着くことから、定住と家づくりを考えるようになりました。
選んだ土地は、松本市にある奥様のご実家の隣。畑の一部を分筆し、土盛りでかさ上げして宅地とすることにしたのです。
奥様:
「ふたりとも泊まりの出張がある仕事ですし、出勤時間が早い日もあるので、親の近くに住むがよいと思って、結果的にここしか土地がなかったというのが正直なところです」
実はご主人自身は賃貸暮らしでよいと思っていたため、近所付き合いが面倒くさそうな持ち家は当初、乗り気ではなかったそう。しかし、広い駐車場がほしいという希望があったり、マンションは月々の管理費がかかるうえに最新のマンションでも結露をするという話を聞いたり、アパート暮らしで子どもの騒音を注意されたこともあったりで、最終的に家づくりをする方向に落ち着いたのだとか。
こうして「とにかく暖かい家にしたい」との思いで奥様が家づくりについて調べ始めると、キーワードとしてあがってきたのが「新住協(新木造住宅技術研究協議会)」でした。
ご夫妻の全ての希望を叶えてくれるのがRebornだった
新住協は、住宅の断熱・気密性能の向上を追求し、技術開発を行うことで日本の住宅技術の進化をリードしてきた住宅技術開発の実践的研究団体です。全国の住宅事業者800社以上が参加しており、Q1住宅(超省エネの高断熱高気密住宅)の設計・施工実績が3棟以上ある会員は、新住協本部の審査に合格するとマスター会員に登録され、新住協のホームページに掲載されます。長野支部には現在、Rebornを含め9社がマスター会員として登録されています。
奥様:
「インターネット検索をすると、住宅関係の質問に必ず新住協の家を推奨する人がいて、その人がおすすめする新住協の本(『燃費半分で暮らす家』)を買って読んでみたんです。そして、どうやら本当に暖かい家があるということを知りました」
そこで、その本に書かれていた通り、仙台にある新住協の事務局に松本市で施工可能な会員を問い合わせ、県内の業者を教えてもらったそう。ほとんどが中信地域の業者でしたが、長野市のRebornも「松本市での施工が可能」と紹介されており、当時、長野市在住だったご夫妻は、打ち合わせが楽だという考えもあってRebornのホームページをチェックするように。完成見学会にも足を運んだといいます。
奥様:
「見学会にはいくつか参加しましたが、Rebornの家の暖かさにびっくりしました。薪ストーブの家でしたが、本当に暖かい家が存在するんだなと思ったんです。やはり新住協のマスター会員に建ててもらいたいと思いました」
ほかの会員や、断熱性能に定評のある新住協以外の住宅会社なども見て回りましたが、最終的にRebornに決めたのは、家のメンテナンスにこだわるご主人の希望に合いそうなことがひとつだったとか。
奥様:
「家の掃除自体は主に私がしますが、掃除機に溜まったゴミを捨てたり、窓の結露を拭いたりというメンテナンス面は夫の担当で、ホコリがたまらず、なるべく掃除やメンテナンスの少ない家が夫の希望でした」
そこで、床下エアコンの暖房を採用している工務店は、ガラリ(格子状の通気口)からゴミや食べカスが落ちて掃除が大変な印象があったので却下。奥様もエアコンからの直接的な暖風が嫌だったのに対し、Rebornはパネルヒーターを採用していたのが利点でした。また、ドアの上に欄間などがある場合も、ご主人はホコリがたまるのが気になっていたそう。
さらに、全館輻射熱による床暖房を採用していた工務店は、換気の設備に月1回の掃除が必要な第1種換気を使っていたのに対し、Rebornはメンテナンスが楽な第3種換気を採用しているところもポイントでした。それに、中気密住宅も見学しましたが、高気密に比べて断然寒かったといいます。
加えて、松本市という立地上、耐震等級3も譲れない条件でした。2011年6月に松本市で最大震度5強が観測された地震では、近隣の家や塀なども大きな被害を受け、建て直した家も多くありました。Rebornは断熱を前面に出してはいますが、耐震にもかなりこだわっているというところも大きな決め手のひとつでした。
そして、ご主人がこだわったのが無垢の木。山好きの祖父の影響で木の知識があり、昔から祖父に「防虫効果があって高性能で家づくりに最適」といわれていたヒノキを使いたいという思いがあったとか。ご主人の生まれ故郷にある材木屋の木を躯体に使いたいというおふたりの希望を叶えてくれるのもRebornでした。
奥様:
「夫婦の希望をすり合わせて、暖かさと耐震と木が使えること、結露しないことが決め手となって、最終的にRebornに依頼しました」
規格住宅も検討したそうですが、自由設計の家に決めたのは、塩原さんからの「自由設計でも規格住宅とそれほど金額が変わらない」との助言から。
奥様:
「ふたを開けてみたらそんなに変わらないわけではなかったんですけどね(笑)。でも、職場復帰をしたらすごく忙しくなるのがわかっていたので、洗濯物の干しやすさとか万全の状態で復帰に備えようと思って、せっかくなので自由設計にしました」
各家事スペースへと回遊できる動線
設計でこだわったひとつが、家事動線です。日々の家事のなかでも生活の基本となるキッチンは、塩原さんと話し、早い段階から横移動を中心とする配置に決まりました。
奥様:
「動線は多少は研究していて、横の動きを考えて収納棚をお願いしました」
こう話す通り、キッチンから横移動できる位置の壁面に大きな可動棚が設けられていて、ランドセルや子どもの教材、ご夫妻の仕事道具など、家族の荷物が収納されています。
奥様:
「この家は日頃、来客もないので、見た目はよくないものの棚の扉をなくして物を出し入れしやすくしています」
オープンな収納が、まるで裏表がなく飾らない人柄のご夫妻の雰囲気まで表しているようです。なお、この可動棚は玄関からの通り道にあるので、誰でも物が置きやすいのも特徴です。(とはいえ、あまりにプライベート空間なので、この取材での棚の撮影はご遠慮しました。)
可動棚の隣には、野菜や果物などを置くために床下冷気を利用したクールパントリー(冷暗食品庫)もあります。ただ、さほど使っていないため、今後は収納棚に変更予定だとか。
キッチンは手入れが楽なホーロー製のタカラ・システムキッチンにミーレの食器洗い乾燥機を設置しています。
収納棚に変更する予定のクールパントリー
横移動を中心としたホーロー製のタカラ・システムキッチン
そして、この対面式キッチンの向かいにダイニングテーブルを配置し、その横に子どもの勉強用の造作カウンターを設置。キッチンからは子どもたちが宿題などをする様子が眺められます。カウンター壁面はRebornでも多く採用されている磁石が埋め込まれたマグネットボードになっているので、写真のほか、今後は学校行事の予定や学校からの便りなどを貼っておけます。(漆喰を塗ったことで磁力が弱いことが難点だそうですが…。)
キッチン背側は、家電が設置できる造作の収納棚。当初、キッチンと同メーカーの棚の設置も考えたそうですが、「造作のほうが費用もかからず便利」という塩原さんからのすすめで作り付けてもらいました。
キッチン横の空間は多目的室。台所仕事をしながら洗濯も同時進行でできるよう、室内干しが可能になっており、隣接する脱衣室(浴室)の洗濯機からすぐに洗濯物が干せます。洋服のアイロンがかけられるようにカウンターも設置。家族が日頃着ている洋服も、この空間に収納されています。つまり、洗う、干す、取り込む、畳む、しまうという洗濯にまつわる作業が一カ所で完結できる便利空間です。また、将来的にピアノが置けるスペースも設けてあり、搬入口も設置されています。
明るく通気性もよい多目的室はさまざまな使い道が考えられる
右側の扉がピアノ用の搬入口
水回りにもこだわり、脱衣室やトイレ内には洗面台を設けず、廊下にのみ設置。洗面台をひとつに集約することで、掃除とメンテナンスを楽にしています。
奥様:
「トイレ内の洗面台はうまく洗えず水が飛ぶだけだと思っていましたし、キッチンとトイレの掃除は私ですが、お風呂と洗面台は夫の担当で、夫のメンテナンスと掃除の手間を省けるようにしました」
この廊下を通って、多目的室から脱衣室、玄関ホール、キッチンを中心としたLDKへとスムーズに移動できるムダのない回遊動線により、家事の負担がグンと楽になっています。
大きな窓で開放的に。小窓はドレーキップに
リビングダイニングの大きな窓は、太陽熱が入ってくる方向を考慮した塩原さんからの提案。とはいえ、当初は壁一面の大開口のアイデアでしたが、ご主人は掃除面や、ダイニング空間に置くテレビに直射日光が当たることが気になり、かなり小さくしてもらったそう。
ご主人:
「窓があると寒い感じがしてあまり設置したくなかったのですが、塩さん(塩原さん)が『奥さんがここで景色を見ながら料理を作るなんて素敵じゃないですか』というのでつけたんです。結果的に窓があることで開放的になり、今は機能よりもこういう“遊び”も必要だったなと思っています」
この大きな窓により、冬は暖かい陽光も取り込めます。なお、窓ガラスは塩原さんからは「三重も二重も計算上の暖かさと燃費はあまり変わらない」とアドバイスを受けたことで、二重ガラスにしたのだとか。実際、寒さは問題ないそう。このほかにも「塩原さんからのアドバイスで役立ったことはいっぱいありすぎて忘れてしまいました」と話すほど、多くの提案があったようです。
メンテナンスを考慮し、大きな窓は開閉しないタイプに
この大きな窓の横の小窓は、一般的なスライド式ではなくドレーキップ(内開き・内倒し)窓を選択。
ご主人:
「引き違い窓は網戸に虫が付いていたときに室内に入るのが嫌でした。ただ、窓が内側に倒れるので、ホコリや花粉が室内に入らないように常にサッシを全部拭くようにしています」
ちなみに窓といえば、階段上部の壁面には天候に応じて自動で開閉する電動窓を設置。初夏や晩夏は常に開放しており、非常に便利で快適なのだとか。実はこれ、本来は天窓ですが「壊れない窓を」とのご夫妻の希望に応じた塩原さんの提案によりつけられました。
畳コーナーを設け、ベランダとウッドデッキは撤去
リビングダイニングの一角には、3.8帖の畳コーナーがあります。
ご主人:
「和室があったほうが離婚率が低いというので希望しました(笑)」
今は子どもたちの遊び場ですが、将来的にはご主人の部屋になる予定です。押入れに扉はなく、部屋の間仕切りも引き込み戸なので、開け放しても扉が邪魔になりません。
床下の1年点検のために畳コーナーで装備をした塩原さん
2階は寝室と将来2部屋に仕切れる子供室、ウォークインクローゼットというシンプルな造り。ベランダは設けていません。
奥様:
「ふたりとも朝早く出て夜遅く帰る仕事ですし、花粉も気になるので、洗濯物は外に干すことがないためベランダはいらないなと。それに、隣にある実家がかつてベランダから雨漏りして室内に浸水して大変だったこともあって、ベランダをなくしました」
ベランダだけでなく、1階にはウッドデッキも設けていません。塩原さんからはすすめられたそうですが、ご主人が木材のささくれるイメージから設置しなかったとか。とはいえ、勉強していくとささくれない素材もあるとわかったので、今後はピアノの搬入口を生かすべく、階段を作る予定だそうです。
こうしたご主人のメンテナンス重視もあり、最終的には細かいやりとりも含めて9プランを経て、現在の真四角のシンプルなかたちの住まいになりました。
地元木材とヒノキは譲れない要素
さて、メンテナンスだけではなくヒノキにもこだわったご主人。塩原さんからはフローリング材としてナラやマツを提案されましたが、ご夫妻でRebornの代表取締役である坂田吉久さんが専務を務める坂田木材に行き、実際に素足で踏んで木の感触を確かめたといいます。
ご主人:
「妻が、ヒノキが暖かくてナラが冷たいといっていたのが印象的でした」
奥様:
「同じ木なのに不思議でした」
ヒノキは柔らかい素材なので傷がつきやすいのですが、どんな木材でも傷がつくものだと考えると、ヒノキがよいと奥様も感じたそうです。また、ナラの木の色が個人的にあまり好きでなかったこと、そして、ナラの価格が高いこともあって、ヒノキのフローリングにしました。
加えて、偶然にも坂田木材にヒノキの在庫があり、格安として知られるパイン材よりも安価になったことも決定打になったそう。結果的に、造作の棚なども坂田木材のおかげで手頃に作れました。
1・2階ともにヒノキのフローリングを採用
一方で、躯体には希望通り、知り合いの材木屋のヒノキを使うことができました。
奥様:
「普段と異なる材木屋の木を使うのは、Rebornとして大変だったと思います。塩原さんにはわざわざ南信にあるその材木屋に行って打ち合わせをしてもらったり、長野県の補助金申請のために県産材の認定取得をしているか確認してもらったりと、面倒なことをいろいろやってもらいました」
そこには、地元木材を使いたいというご夫妻の情熱に応えたいという塩原さんの熱意があったのではないでしょうか。
玄関直結の屋根付きガレージも熱望
木材といえば、特徴的な屋根付きガレージもご主人の強い希望でした。家だけでなく車のメンテナンスも考慮し、車体をきれいに保つために家と駐車場の間に雨水が入らないように依頼したのです。
ご主人:
「家と駐車場の隙間をなくしたかったので、アルミの既製品カーポートは嫌でした。木製になったのは塩さんのゴリ押しです(笑)。費用はかかったものの、見た目もよいので作ってもらって満足ですね」
家族:
「おかげで冬は暖機運転や霜取りなどの必要がなくなって本当に楽です」
雨の日の買い物帰りなども便利だそう。屋根付きガレージは希望しても予算的に省かれてしまいがちですが、おふたりの話を聞いていると、改めてよいものなのだと実感させられます。
ガレージの天井にある蛇の人形は、ツバメ避けとして塩原さんにすすめられたもの
LATENTOのクセをつかんで省エネを実現
ところで、LATENTOの設置はRebornのなかで6軒目で、塩原さんのすすめだったそうですが、どのような経緯だったのでしょうか。
奥様:
「何軒か見学に行った家に設置されていて、よいとも悪いとも思っていなかったんですが、塩原さんから『この家は周りに何もなくて陽当たりも良好だから』とすすめられました。特に反対はしませんでしたが、いぶかしがって質問はしましたね。仕組みは簡単なんですが、理解するまでに時間がかかって、いまだに質問しています」
ご主人:
「大雑把に仕組みはわかったんですが、昔、ソーラーパネルが壊れて自分で処分したことがあったので、そうなったときにどうなるかとか、元は取れるのかなどを聞きました。壊れたときは撤去するかまたつけるかで、そのためにも蓄熱用のタンクはどの家も外ではなく室内に入れてあるとのことでした。元はだいたい15年で取れるそうで、ちょっとしたクセさえつかめば使い心地はよいです」
パネルヒーターの不凍液の温度設定などに決まりがあり、かつて使用していたソーラーパネルよりもやや複雑なことから、使っていくうちにわかってきたことが多いそう。例えば、電源を入れっ放しにしていることが一番燃費がよいと聞いていましたが、最近は状況に応じて給湯の電源は入れたままにし、パネルヒーターの電源は切っているといいます。
ご主人:
「家が十分暖かくてパネルヒーターが不要なときも暖められた不凍液が家中を巡るので、せっかく作った温熱がダダ漏れになってしまいます。今は室内が暖かければ天気を見て電源を切っていますが、曇りの日に切ってしまうと寒くなってしまうので、そのへんが難しい。つまり、パネルヒーターの電源を切るタイミングのクセをつかむだけです」
とはいえ、今もまだ温度を変えてみたりと研究中なのだとか。
奥様:
「給湯設備だけならもっと簡単ですが、給湯とパネルヒーターの両方を使っているのが大変なところです。ただ、給湯に関しては灯油を使わず簡単に温水が出てくるのが不思議ですし、洗い物が楽ですね」
しかし、これまで冬場にLATENTOが凍結してしまうトラブルもあったとか。故障ランプも点いたり消えたりでしたが、1週間ほど放置すると自然解凍し、再び問題なく使えるようになったそうです。その間、灯油のボイラーによって給湯はできるので、生活には問題はなかったとか。このへんもまたクセということでしょうか。
それでは、LATENTOの導入はおすすめですか?
ご主人:
「費用対効果が私自身、まだわからないのですが、日射がよい地域ならおすすめかな。私の性格的に細かいところが気になるだけで、いろいろなことを気にしない人は普通のソーラー電池を使っている感覚で利用できます。それだけでも意味があると思います」
奥様:
「灯油の消費量については、以前よりも家が広くなり、購入方法も昔はポリタンクに自分で買ってきてストーブに給油していましたが、今は配達してもらっていて単純比較ができないものの感覚的には減っています」
そこで、灯油使用量を聞いてみたところ、暖房に関しては取材した4月の時点で1日1リットル前後とのことでした。
ご主人:
「1日の使用量がパネルにグラフで出るのですが、15時頃からは全く灯油を使わずにLATENTOの集熱でまかなえています。夜はまたちょっと灯油を使いますが、この積み重ねで15年で元が取れるのかな」
真冬の1月でも1カ月の灯油使用量は80リットルだったとか。以前のアパートではお風呂にプロパンガスを使用していたため、キッチンと合わせてガス代が2万円ほどだったのに対し、給湯がLATENTOと灯油、その他は電気のみになった現在はガス代がかからない分、全体の光熱費はかなり安くなっている実感があるそうです。
覚悟して臨むべきDIY
そうしたなかで、おふたりが御多分に洩れず苦労をしたと話すのがDIYです。施主のDIY施工はあらかじめわかっていたそうですが、奥様のご両親を頼りにしていたところ、目論見が外れたため、毎週長野市から松本市に通って施工をしたそう。
ご主人:
「塩さんからは事前に『そんなに大変ではない』といわれていましたが、信じてはいけません(笑)。DIY自体は好きですし、現場が近かったなら問題がなかったんですが、期限が決まっていて、仕事柄、土日しか動けなかったのがしんどかったですね。朝4時起きでやりました。漆喰塗りは舐めちゃいけません」
結局、工期ギリギリまでかかり、平日に仕事を休んで塗装をした日もあったそう。また、最初は現場の大工とやりとりをしながら進める方法もわからなかったといいます。
奥様:
「それまでは塩原さんと打ち合わせをしていたのに、DIYが始まったら途端に放り出されて大工さんとやりとりをするようになったんですけど、それをわかっていなかったので最初は戸惑いました。『暮らしのことば』に掲載されているほかのお施主さんの記事を読んでも同じようなことが書いてありますが、本当にそうだなと共感します(笑)」
特にK邸を担当した棟梁は寡黙なタイプだったこともあり、塩原さんから「棟梁とコミュニケーションをとってください」といわれるまで指示を受けて動くことに気づかなかったそう。
奥様:
「途中からそのやりとりがわかったんですが、これからRebornで家を建てる人は覚悟しておいたほうがよいと思います(笑)」
ただ、真冬のDIYでしたが、家の構造がよいので作業中は寒くなく、毎週通うたびに構造や施工の変化を見ることができたのはよかったとご主人。また、奥様は他社で家を建てた友人が予算の関係上、漆喰を諦めて壁紙クロスを採用したそうで、「漆喰にかかる費用は材料費ではなく人件費」という話を聞いて納得したといいます。「おかげでうちは漆喰にできました」と話します。
子どもたちが自由に遊べ、室温に左右されない快適性
では、実際の住み心地はいかがでしょうか。
ご主人:
「最初はアパート暮らしでよいと思っていたけど、建ててよかったというのが一番の感想です。子どもたちが遊べるのがいいですね」
奥様:
「以前のアパートでは散々『高いところからジャンプしちゃいけない』とか『静かにしようね』といっていたので、お互いにストレスがなくなったのは大きいですね。コロナ禍の今、以前のまま借家にいたら階下の家に迷惑をかけていたと思います」
また、特に冬の暖かさは格別で、今まで使っていた羽毛布団が不要になったそう。仕事が忙しいなかで熱い・寒いを気にする暮らしではなくなったことが快適だとか。
奥様:
「以前は冬に朝起きてストーブをつけてからもしばらく寒くて動けずじっとしていましたが、今は早朝からすぐに活動できます。コタツがなくなった分、掃除の手間もなくなりましたし、真夏は帰宅時のモワッとした暑さがなく、すぐにエアコンのスイッチを押さなくていいとか、小さなことが積み重なって暮らしが楽になりました」
家事動線が非常に便利なことも気に入っているそうです。また、ご主人は家のメンテナンスや掃除に関して、引き渡し時にもらったRebornオリジナルの手作りの説明書が助かっているとか。この説明書を見ながら塩原さんにメンテナンスを聞いているようです。ちなみに、心配していた近所付き合いはそれほどなく、今のところ、特に面倒なことはないとのことでした。
実感が込もった「今後のアドバイス」
それでは、今後Rebornでの家づくりを考えている人へのアドバイスをいただきました。
奥様:
「Rebornを選ぶ人は断熱などにこだわりがあるでしょうから、きっと塩原さんのブログに目を通していると思いますが、あのブログを読んでおかないと、わけがわからないまま進んでしまいます。私はいまだに読んでいます」
また「こうしたいという強い意志をもつことがおすすめで、家づくりの知識も勉強しておいたほうがよい」とご主人。
ご主人:
「うちは妻が勉強していて知識があったけど、私はなかったので、基礎知識をもって見学会に行ったらもう少し違っただろうなと思います」
とはいえ、奥様は断熱などの構造関係、ご主人はホコリなどの掃除やメンテナンス関係と、おふたりで見ている視点が違ったのはよかったと奥様は話します。
さらに「住宅ローン控除は勉強しておいたほうがよい」とご主人。住宅ローン自体は住宅価格よりも高い金額で借り入れることができますが、住宅ローン控除は住宅価格を超える分は適用されないため、注意したほうがよいとのこと。Rebornのファイナンシャルプランナー・岩坂さんにも一度相談したそうですが、もう一回、住宅ローンだけに絞って相談をする機会を設けたらよかったといいます。
ほかにも、完成見学会はたくさん足を運ぶといいといったアドバイスも。「木が好きな人は一緒に坂田木材の完成見学会も見るとよい」とのことでした。
それと、「新住所の登記についても注意が必要」と奥様。というのも、いざ完成後に住民票を長野市から松本市に移そうとしたところ、以前に畑だった土地は住所の登記がなく、すぐには転居届が出せなかったうえに手続きに1週間がかかり、引き渡しが期限ギリギリになってしまったそうです。今後、同様の家づくりを考えている人は心に留めておくとよいでしょう。
塩原さんへのアドバイスとしては「働きすぎで心配になるので健康に気をつけてほしい」と奥様。
奥様:
「『暮らしのことば』でほかのお施主さんも心配していましたが、以前に夜11時頃、食洗機にエラーが出て会社に電話をしたら塩原さんが出たんです。その時間まで職場にいるとはいわれていましたが、実際に電話に出て驚きました」
おかげで食洗機は無事使えるようになりましたが、心配は尽きないのだとか。塩原さん、無理のない程度でこれからも頑張ってください!
ひとつの質問でも、次々と盛りだくさんの返答が出てきたKさんご夫妻。その話しぶりや、奥様の「家づくりに何の後悔もなく、インターネットで新住協を推している人にお礼をいいたい」といった言葉など、会話の端々から暮らしへの満足と納得の様子がうかがえた取材でした。
記者感想
まず、最初に家の中をぐるりとご紹介いただいて感じたのは「なんて家事動線・生活動線が便利そうな家なんだ!」ということ。収納なども隠す方向ではなく機能性を重視しており、不要だと感じたクールパントリーは収納棚に変更予定だったりと、気になることは“なあなあ”にせずに快適性を追求している様子が印象的でした。それは、どのように住みたいのか、自分たちの考えと本質を理解しているからでしょう。
また、普段の家事は明確に役割が分担されているようですが、家づくりに関しても、奥様が構造や断熱など基本的な性能の勉強、ご主人がメンテナンス面などの視点から、お互いの価値観の違いを共有しつつ作りあげているのも印象的でした。家づくりの際、「掃除や日々のメンテナンスがしやすい」という視点はつい後回しにしがちですが、実は暮らしやすい家の根本的な条件でもあります。その着眼点が備わっていたことがまた、K邸の快適性を高めているのでしょう。
それに、奥様いわく「夫は塩原さんから細かいといわれている」そうですが、その几帳面な要望に応えられたのは、塩原さん自身のこだわりと根気強さがあったかからではないでしょうか。つまり、Rebornとの相性もよかったのだと感じます。
地元のヒノキを使っているのも、この家のポイントです。地元木材を生かすことは、地域の森や地場産業が活性化され、小さいながらも地域経済が循環する効果もあります。広い意味での持続可能な家づくりは、自然エネルギーを活用するパッシブハウスの考えにもつながっていくのではないでしょうか。
そのうえで、暮らし心地の感想を聞いたご主人の第一声が「子どもたちが自由に遊べる家を建ててよかった」だったことが、家族全員の幸せを反映しているようでした。
ライター:合同会社ch. 島田浩美
写真:FRAME 金井真一