断熱コストについてSession6

性能とコストのバランス。適切な選択のために知って欲しいこと。

ここで陥りやすい大きなミスは、断熱材にお金をたくさんかければかけるほど性能は比例してよくはならない、ということ。同じ断熱材で厚みを2倍にしても性能は2倍にはならないということ。
コストと性能が描くグラフは図に書くとこんな感じです。最初のほうは断熱材にお金をかければかけるほど性能が比例して上がってゆきます。そしてある一定の場所からはあまりお金をかけてもそれほど性能が上がらない、という風になります。この赤い丸のところ、ここが最もコストパフオーマンスに優れた第一のターゲットゾーンになります。

断熱材以外にも、窓や玄関ドアなどの開口部の断熱性能や、もっと深く追及すると方位によってガラスの種類や取り付ける位置などさまざまな要因が断熱性能には関係してきます。建築主の要望と予算を勘案して、建築主が納得をしていただけるような提案をする、それがプロとしての役割りだと思っています。

間取りや窓の位置・大きさがおおよそ決まったら、さまざまなパターンで光熱費をシミュレーションしてゆきます。(私は、QPEXというコンピューターソフトを用いて算出しています)
どの断熱材をどのくらい厚みをとるか、サッシの大きさや種類、ガラスの種類などを様々なパターンで入力し、そこにさらに気象庁の統計データから、地域の日射量などもインブットしながら、最もコストパフォーマンスのいいところを提案していきます。
このシュミレーションが本来の設計作業といえるでしょう。「あと+10センチ厚くすると年間で灯油が50ℓ程減らすことができる。でもその追加費用は10万円くらいかかりますけど」というような打ち合わせになります。

環境意識が高く、予算にゆとりのある方はもう少し背伸びをして、さらにエネルギー消費が減るように投資してもいいのではないでしょうか。高効率給湯ボイラーや、省エネエアコンなど設備機器などを導入してもいいのですが、そこはやはり機械もの。断熱材やサッシの寿命に比べれば比較的早い段階で交換もしくは効率が落ちてゆくことでしょう。

【断熱工事費の目安と標準としたい仕様】

【断熱工事費の目安と標準としたい仕様】
● 新築木造住宅の場合、坪当たり2~3万円はかけたいところ。35坪の2階建て木造住宅で70万~100万円程度をかける
● 次世代省エネ基準を大きく上回り、床面積1m²あたり灯油換算で5リットル/m²以下にすると、とても暮らしやすい冬を迎えられます。

(例)延床面積115m² Q値=1.65 建築地/松本市

床断熱材/高性能グラスウール密度16kg/m³ 厚さ14cm
壁断熱材/高性能グラスウール密度16kg/m³ 厚さ12cm
天井/高性能グラスウール密度16kg/m3 厚さ20cm
開口部/オール樹脂サッシ
    ガラスはLOW-Eアルゴンガス入りペアガラス
灯油消費量/580リットル/年 (室内20℃全館暖房)

同じ家を次世代省エネ基準ぎりぎりクリア仕様で建てると灯油1000リットルが想定されます。
換気/第3種セントラル ダクト方式
換気回数/0.5 回/h
(2時間に1回、家のなかの空気が外気と入れ替わる)
暖房/薪ストーブと灯油ポイラー式の温水パネルヒーターを併用

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