住宅とエネルギーのこと。Session2

「次世代省エネ基準」のことご存知でしたか?

2050 年までに、すべての新築住宅がZEROエネルギー、ゼロカーボンの家にするという国家方針が示されています。
みなさんは「次世代省エネ基準」という言葉を聞いたことがありますか?
平成 11 年(西暦 1999 年)国は21世紀にふさわしい建物の断熱性能の基準の引揚げを図りました。
全国を市町村単位で地域分けし、その地域にふさわしい断熱性能の程度を値で示しました。
Ua値(ユーエーチ)というのがそれです。Ua値は家の中から外に逃げる熱の程度を示す値で、数字が小さければ小さいほど、断熱性能が優れているといえる数字です。
各メーカーはその基準をクリアするべく断熱材に注目が集まりましたし、建築主側からすると建築業者選定の際、その家が持つ断熱性能の物差しとして判断材料の一つに加わりました。「次世代」という言葉使いがいかにも未来的指向で、大変優れた基準をもつものだとイメージされがちですが、今やこの基準は最低限の基準に変わりつつあります。
この基準を無視するわけにはいきませんが、私たちはもはや、この基準にとらわれているべきではなく、もっと高レベルな断熱性能を備えた住宅、将来的に多大な環境負荷を与えることのない住宅をつくらなければならないと考えています。

「断熱」と「省エネ」の商品化…そして真実はどこへ?

その裏側には、実はなかなか気づかない盲点がありました。消費向上、国家成長継続が今後もずっと続いてゆくという願望にも似た、エネルギー大量消費容認型の思考が背景にあったのかもしれません。各ハウスメーカーは「高気密高断熱、次世代省エネ基準クリア」と商品に銘打って、その省エネ性能を訴えました。

全館冷暖房で、部屋中どこにいても暖かい。中には厳寒期に裸足でTシャツ姿の様子を写真で示した会社PRまでなされるようになったのです。
これでは、本来エネルギーを減らすための高断熱高気密も本未転倒です。それまでの低断熱・低気密の暮らしに比べて、いざ、高気密・高断熱の家に暮らしてみると光熱費がびっくりするくらい高くなってしまったのです。

減らないエネルギー消費量 なぜでしょうか?

そんな中、日本全体のエネルギー消費量は減っているのか。答えは“NO”です。
先の東日本大震災で私たちは「エネルギーというものに対する考え方を改めなくてはならない」ということは理解したといっていいでしょう。計画停電で生活スタイルが影響を受けるのは嫌ですから、みなさんも相当節電に努めたはずです。しかし相変わらず消費されるエネルギーは減っていく方向になりません。なぜでしょうか?このことは国民の一人一人が自問してみる必要がありそうです。

セッション2住宅とエネルギーのこと。

家庭のエネルギーを試算。どうご覧になりますか?

次世代省エネ基準をクリアした住宅を建てたからといって、家庭での光熱費が減るとは限りません。 もともと基準のレベルが低すぎたのか、適切な断熱気密施工がなされていないのか、全国の家庭部門におけるエネルギー消費量は年々高まっていくばかりです。もちろん家電製品の普及拡大や生活スタイルの多様化、大家族の減少などの要素も多分に影響していることでしょう。
私の試算では、延床面積35坪程度の、次世代省エネ基準をぎりぎりクリアした住宅を長野市で新築した場合、その暖房エネルギー消費量は、灯油換算で約1000 リットルです。
灯油もずいぶん高くなりました。灯油1リットル=100 円とすると、暖房だけで約 10 万円も1シーズンの冬にかかるということです。さらに給湯で灯油ボイラー(またはガスボイラー)を用いる訳ですから、4人家族の場合は年間で暖房と給湯で約20万円程度かかると試算できます。

灯油もガスも電気も今後も値上りしていくと想定されます。「うちはオール電化で暖房は蓄熱暖房だし、給湯はエコキュートだから関係ない」そんな声もよく耳にしますが、料金の安い深夜電力は、原子力発電あってこその料金設定であることはご理解いただいているでしょうか?
深夜電力の低料金メニューは今さら変更もできず、その安いはずの電力は、実は3~4倍も高い発電コストでまかなわれています。高い天然ガスを資源国から仕入れ(当然値切れない…)火力発電によって私たち家庭まで送電されているのです。いつまでも続けられる料金体系であるはずもありません。

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