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家を大事にするということ

2012.12.17

12年前に新築をしたポストアンドビーム工法のMさま邸。外部の全面的な再塗装などを昨年計画していましたが、いろいろな事情で、1年間の延期となっていました。 M様は、新築時にも家づくりに大変熱心で、いたるところでその想いを感じることができます。 薪ストーブの炉台にも相当なこだわりがあったことでしょう。お掃除がなかなかできなくてタイヘン!とおっしゃっていましたが・・・。 以前は布ドリップのおいしいコーヒーが飲める喫茶店をされていたようですが、今は一時的に休業してらっしゃいます。 近いうちに再開できるといいですね。 一ファンとして期待してますよ!!       昨年の秋に伺った際の写真です。ワンちゃんもいっしょにくつろげる喫茶店ということで、あちらこちらにドッグモチーフが散りばめられています。           鋳物製の看板はまだ取り外されていません! 風枝とは、なかなか粋な屋号ですね。 私も幾度か奥さまから珈琲をいただきましたが、それはそれはおいしゅうございます。       昨年にご提案した文章をそのまま。 *********************************** M 様の大切な家、築後11年のリフレッシュ工事の概要・考え方 ~いままでありがとう。そしてこれからもよろしく~ しおはら住宅デザイン設計 代表 塩原 真貴 ■長野ログハウス建築設計のつくるポストアンドビーム工法ver.2モデルである。特徴として、 ・土台に丸太を使用している。 ・外部にあらわしとなっている水切り板金が短い。(意匠上の問題、風になびいて音鳴りしまうということで、土台・梁の上端が最も広い場所の寸法で水切り幅を決定していた)・気密はあまりよくない。時間の経過と共にログの収縮が進む(3年間程度)。これにより、ログ柱際やログ梁の下端、上端に隙間が必ず発生する。収縮の程度、ねじれの程度は天然の丸太木だけに予測不能。 ・上記の弱点(後に振り返ってみれば)があるものの、当時の他社ポスト&ビーム工法と比較すると、壁内通気工法、棟換気工法、多様な住宅ニーズにこたえる姿勢など、ハード、ソフト両面で長野ログP&Bのほうがかなり優れていたと自負あり。 ■ver.2は、1階の梁が腐れる事象が散見される。特に関東や関西、九州など平均気温が高い地方。また、卓越風(その場所で頻度の高い風向き)や日当たり、近隣との接近状況など様々な要因が関係して梁の腐れが発生する。 ■腐れはログ材の塗装で防止できるものではない。なぜなら割れからの雨水の浸入が原因である場合が多いからである。土台や梁{=建築用語では横架材(おうかざい)と言うが}の割れは水を受け入れ、抜けにくい構造となる。梁の腐れを防ぐ方法は、その梁が出来るだけ雨水にさらされないようにすることが第一である。 ■土台のエンド部分でも腐れが発見されやすい。建物の角で、通し柱を受けるために土台が20CM~30CM伸びている箇所である。土台の一部や通し柱の下部が腐れ、土台の交換、柱の下部1M程を切断し入れ替えるなどの手術をしてきた。この部分は地震時など建物が水平方向に揺れる時、筋交いや壁により引張力・圧縮力がかかり構造を支える耐力壁になっている場合が多い。 ■ポスト&ビーム工法ver.3ではこの点を改良し、土台は角材(150角)とし、外観にあらわさず、取替え可能な付け土台で意匠を整えた。梁はまだ真壁であるが、梁の上面を3寸勾配程度にけずり、その勾配面に120mm程度の板を下地にしてガルバリウム鋼板製の水切り板金を施している。これにより梁が雨水で濡れる場面は格段に減った。しかし、先に述べたような気密の程度は相変わらず時間と共に悪くなるという弱点を克服できていない。 ★塗装工事に先立って 基本的に高圧洗浄は、丸太と壁とのすきまから水が室内にかなり入ることが予想されるのでやらない。 ★外部木部塗装前の処理についての指針 ・1次処理としては、やはり固く絞った濡れ雑巾でほこり・塵をふき取る。 ・2次処理としてスポンジ状のやすり(かなり粗目)で表面を人の手でこする。これは塗装の乗りを良くすることや、腐れや腐る前の木肌の劣化(繊維質が網目のように浮き出て、水を吸い込みやすい状態)など大きくダメージを受けている場所を探しだす目的である。木肌を研磨して色、艶を取り戻す作業ではない。 ★大きくダメージを受けている場所については、機械的に研磨したり削り取るなどして、腐朽菌を出来るだけ除去する。さらにインペルロッドを挿入し、腐れの予防をする。 ★上記箇所については抜本的改善必要箇所とし、水切り板金を水平方向に延長したり、インペルロッド挿入後、定期的にインペルロッドの減り具合などを観察し、腐れの進行を管理観察するなどの対策をする。 ★木部で黒くなっているヶ所の処理について。 お金をかけて木部、特にログ部を研磨し新築時のようによみがえらせたい(あるいは剥離材で塗膜を取り、漂白材などで木部を洗う)という気持ちは十分理解できるが、そのことがベターで、美しいことだとは思っていません。木の表面も10年も経てば黒くなります。特に塗装が剥がれ落ちたヶ所はそうなっているはずです。この上から塗装をすると、塗料がよく吸い込みます。必然的に奥まで塗料がしみこんでいきます。見た目にはより黒くなりますが、家全体が黒くなっていくことから、みっともない感じではないと思います。むしろ木の家が持つ生命力、重厚感、味がでてむしろ好ましいともいえます。この価値観は木造の家独特で、ならば塗装なんかしなくていいじゃん、という輩もいるほどです。 ★塗装の意味とは? 塗装は、木部の劣化・腐れに通じる雨水が木肌に触れたとき、その水をはじくという役割と同時に、美観・意匠的に建物を引き立てるという役割があります。家全体の色を整える(コントロール)必要がなく、雨水があたらないのであれば塗装は必要ないともいえます。 ★塗料の選定について 今回の再塗装についてはシッケンズ社のセトールノバテックをお勧めします。シッケンズの塗料については賛否両論あることはもちろん承知しております。しかし、前回がシッケンズセトールHLSであること、また未来に向けてコストパフォーマンスの良さ、塗膜の厚さから、シッケンズ社セトールノバテックがベターな選択ではないでしょうか。デッキ床についてはノバテックに耐摩耗性の機能を持たせたセトールデッキが良いです。 ちなみにノンロットは優れた浸透性が特徴の塗料で塗膜がうすく、つや消しの表情が特徴の塗料です。それゆえ、塗膜形成型の塗料の上からの塗装はNGです。いったん塗膜をすべて除去してからなら理解できますが。 ★塗装のタイミングについて 物の本やカタログには、2~3年に一度再塗装を勧めています。黒ずみを避けることや、太陽光による塗料の分解スピードからそう割り出され、確かにそりゃそうだよ、と思います。ただこの期間スパンで、足場を設置し塗装を繰り返すことが出来る人はそうはおりません。そんなことから、塗膜が長持ちする塗料の使用を前提に、あるいは水がほとんどかからないことを条件に、6~8年に一度(先ほどのスパンとは3倍ちがう)の再塗装をお勧めしております。 ★塗装工事の費用について 塗料の種類と塗装回数で工事費は算定されますが、再塗装の場合、木肌の状態は場所によってまちまちです。ノバテックの場合、最低2回塗りで、その他状況をみて、塗膜劣化の著しいところは3~6回くらいで考えています。別紙見積書で人工算定しており、原則その範囲で工事を済ませるようにしますし、減れば減額も致します。しかし、足場を掛けて、その木肌に直接触れて見なくては劣化状況は分かりませんので、そのあたりお含みくださいますようお願いいたします。 ★外部他の塗装について ・屋根は基材露出しつつあるので、今回必ず行ってください。 ・ホワイトモルタルの白壁は、クラックが多数ありますが、剥離落下や漏水につながるようなものはないようなので、美観上の問題だと思います。今回のタイミングではマストではありませんが、ログ柱との隙間はコーキングはマストです。水密性、気密性が向上します。”すす汚れ”の問題があるので、高価ではありますが自浄作用のある塗装を行うのがおすすめです。 ・水切り板金や雨樋の塗装は、今回見送りでよいのではないでしょうか。 ●玄関ポーチデッキの階段については、長野県松本市のランバーテック社の防腐防蟻薬剤マイトレックACQ加圧注入材(基材は信州産の杉)で作り直すのがよいと思います。無塗装で30年ほど耐久性あり。(実績あり)はじめ深い緑色をしているが3~6ヶ月で茶褐色に変化します。 ●築後11年ということでもあり、床下、屋根裏を含め、家全体の点検をお勧めします。(実施:塩原)建具の建てつけ調整など簡単な作業・調整も同時にします。長野ログハウス時代に作成したチェックリストにより行いますが、問題、不具合箇所の早期発見、早期対処につながるので、ぜひご利用ください。 とりとめもなく羅列してしまいましたが、参考にして頂けると幸いです。 ************************************* そして先週から、工事がついに始まりました。 関東地区の工事ということで、業者の選定にいろいろと難がありましたが、幸い長野市でお世話になっているみなさんにご理解ご協力をいただき、3時間ほどかかるところを来てもらっています。 道路から敷地への入口が宅地延長で狭く、足場を掛けるのも近くで荷物を積み替える「小運搬」が必要です。   長野市のお隣、須坂市から4t車で。 この資材を2t車に積み替えて現場に搬入します。 1台では積み切れないので、いったん戻り、明日再度来ることになっています。     幸いにもすぐ近所の武道館の駐車場を借りることができました。 こちらの2t車に積み替えて。 足場資材をどんどん搬入していきます。     1時間ほどで小運搬が終了。 いや~力持ちってかっこいいですね! この後、3名のとび職人がどんどん組みあげてゆきます。         近くに置いてあった、足場計画図をのぞき見。   ちゃんと図面を描いて、効率よく組むことの準備が出来ているわけです。だからこんな遠方でもちゃんと仕事になる。   本日の様子。 塗装工事が効率よく行える足場が立派に完成していました。 さっ!いってみようかぁ~!!      

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