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現地調査~調査企画業務

2012.07.28

「築40年ほどになるらしい建物を、リフォームするか建て替えるかどうか迷っている友人がいるので、一度見てもらえないだろうか?」そんなご相談をいただいたのが5月。ガス工事の取引先であり、我が家にガスを供給してくれているエナジー内山社長からの紹介でした。 内山さんとはかれこれ10年以上の付き合いで、これまでも公私共にいろいろとお世話になっています。何でも彼は、全国でも屈指のジェットスキーの名手だったとか。確かにかっこいい体つきで、腹も出てません(笑)くやしぃ~~! 5月の下旬に、内山さんと共に小川村へ。初めてOさんとお会いし、現地の調査をしました。 小川村の農村部に位置するO様邸は、現在母親が1人で住んでいます。父上は数年前に他界。今回の施主であるOさんは長男ですが、兄弟は、みな家を出てしまっています。 図面が全く残っていないとのことで、各部屋を見ながら、まずは図面起こしからです。2階にはお母さんの趣味ということでアトリエがありました。 ここで一人静かに絵を描くことが、きっとお母さんにとっては至福のひと時なのでしょう。     2階は昔、養蚕をしていましたが、10年ほど前にリフォームを実施ズミ。非常にきれいです。その時はまだ父上も生きていたはず。 使わない2階をなぜリフォームしたのか?     現在、使わない2階は、たまに帰省するOさんの子供たちが遊ぶ場所になっています。 亡くなったお父さんも、孫たちともっともっと遊びたかったでしょうに・・・。       2階リフォームの際、1階の一部を少し増築して、トイレや洗面を更新されていました。 ただサッシはアルミサッシでガラスもシングルガラス。暖房もないので、非常に冬はつらい、とのことです。断熱力が不足しているようです。パッと見はいいんですけどね・・・。         ただ、お風呂はその時に手を入れておらず、昔ながらのタイル壁&ステンレス浴槽。やはり寒い窓に冷たい床。換気扇もなく、熱環境的には厳しすぎる。 ユニットバスへの変更が希望です。           お風呂は今もなお、長府製の薪ボイラーを使用しています。この薪ボイラーのちょうど向こう側に浴槽があります。             北側には台所があります。それなりに広さはありますが、収納量が不足していること、日中でも電気をつけなければならないほど暗いこと、床がベコベコしており、なおかつ冬冷たいこと、などの問題があり、流し台もそろそろ寿命ということで、ここは全面的に改修する必要があります。     台所に続く茶の間が、お母さんのリビング兼用になっています。やはり収納量が不足しているようです。 仏壇、神棚、テレビ、小物収納ロッカー、その他いろいろな書類などがここに集められ、ここが生活の拠点であることがみてとれます。     10帖の和室(客間)と続き間の10帖の居間。合わせて20帖+8帖の広縁。広い!すばらしい!ただ耐震性には問題ありそうだと直感しました。         1間巾の広い広縁です。健康器具など、余り使われることのない品々の行き場になっています。ここがこの家では最も陽のあたる最良の場所です。         和室も和室らしく、ふすま絵、欄間が配され、ニッポンの木造建築そのものです。 このあたりは、この家を象徴するスペースなので、やみくもにリフォームするのではなく、”調和”を心がけたいところです。     広縁の床下です。基礎は独立基礎で、断熱材もなく、冬は外気温同等になってしまうと想像できます。 このように吹きっさらしの床は~1階が駐車場になっているような建物の場合もそうですが~直接冷たい風がビョウビョウと吹きっさらすので、とっても寒いのです。   そのような床が、家の北側や西側にところどころあります。基礎工事の費用を抑えるためにそうしたのでしょうが、これでは絶対に冬暖かい家にはなりません。 床が結露していたはずで、床材はもちろん、土台も腐れてしまっている可能性も高いです。腐っていれば白ありや黒アリによる被害も想定できてしまいます。       外観は、軒の出が深く取られており、軒裏や外壁材の状態はいいのですが、やはり南面がほぼ全面ガラスとなっており、地震時の倒壊が心配です。         畳を一部はがして、粗床をくり抜き、床下に潜りました。やはり断熱材は全く入っていません。また、地面も湿った土で、カビの臭いが充満しています。         床下に潜って、断熱材を入れることが出来ないほど、狭い空間です。やはり思い切って床を全面的に剥がす必要がありそうです。         給湯用でサンジュニアがありました。屋根上のパネルに水(不凍液)を送り、温まった湯を熱交換してお湯に換えるシステムです。これは使えますねぇ。予算が許せば、断熱材入りの壁・屋根で覆い、出口の湯をボイラーに直結して、更なる省エネ設備としたいところです。         現場での間取りメモ。あまり時間はかけられないので、間取りと建具(サッシや引き戸)の位置だけはしっかりと押さえ、あとは写真をたくさん撮って、事務所に持ち帰って図面を起こします。           数日後、手書きで起こした1/100の平面図。           また、現場調査の報告書として、メモ書きをまとめておきます。施主の希望や工事のポイントとなることを書き、建て主にも渡します。             さらに、粗っぽいのですが、予算付の改修メニューを示します。 考えられる改修工事メニューを列記し、優先順位を打ち合わせするためのものです。予算はこれまでの経験をもとに割り出した、ざくっとしたものですが、これがないと、スタートが切れません。     ここまでの作業は無料で行っています。 予算のこと、工事期間のこと、工事内容のことなどに目途が立ったところで、さらなる立案を行うため、「調査・企画業務委託契約書」を結びます。 今回は¥30.000でお願いしました。このお金は、ゆくゆく設計監理契約が結ばれた場合は、その設計費に充当されることになります。設計監理契約に至らなければ、¥30.000を領収させてください、というものです。費用をいただく以上、きちんとした精度の高い調査が出来ますし、企画を練る作業にも本腰が入ります。建築主にとっても、設計者の実力や考え方、相性なども最小限リスクで判別できると思います。設計契約あるいは建築請負契約にいきなり踏み込むよりは、建築主側はもちろん設計者側も、双方にとってメリットがあると考えています。   先週、設計監理契約をしていただきました。今日は基本設計の第①回打ち合わせでした。 当社オリジナルの打ち合わせシート(全7回)に準じて打ち合わせを進めていきます。     今回はライフラインのことや間取りのことが中心でしたが、O様からいろいろな意見やアイデアの提案があり、2時間余りでしたが、いい打ち合わせが出来ました。       工事着工まで日がありませんので、住みながら改修の肝である、工事ゾーン分けと工事日程の大まかな説明を加えました。 O様ご家族にも、片づけや不用品の処分、整理などご協力していただかなくてはなりません。     細かい工種別の工程表を渡すよりも、ゾーンを色別して、カレンダーに分りやすく示すことがいいのだと思います。 浴室が使えないのはいつからいつまでか。キッチンが使いえない間は、どうするかなど、住みながら改修工事ならではの打ち合わせもたくさんあります。     今回調査をさせていただいた折、お母様にも、現状で困っていること、直してほしい所などをヒアリングさせていただきました。その際に、この家を亡き夫と共につくったこと。お二人で山から木を伐りだしてそれを柱に使ったこと。お二人で土壁を塗る作業をやり切ったこと。そして、 「要望は別にありません。おとうさんと一緒に、自分たちでつくったからな」、とおっしゃいました。 その時のお母さんの顔が、とっても印象的でした。いい顔してたなぁ。 築40年のOさま邸。40歳の長男とその家族が来春からここで暮らします。ウソのない、価値ある工事になるよう、気持ちを込めてお手伝いさせていただきます。 現地調査を終え、代々伝わっているであろう奈良漬をいただきました。ちょとしょっぱかったけど、深い味わいの優しい味でした。 ここで暮らしてゆく、という覚悟がにじみ出た表情のO様ご夫婦と、無邪気な3兄弟、そして40年間、この土地を守り続けてきた母親に見送られながら、小川村を後にしました。 「また来ます!」  

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